円高シナリオを予見する声が強まる中、株式市場ではどんな銘柄が勝ち組となり得るのか。特集『注目テーマをメッタ斬り! “人気株”の勝者・敗者』(全18回)の#13では、円高・ドル安局面で底堅い推移が期待できる「円高に強い株」ランキングをお届けする。併せて、そのワースト版も作成し、円高時に投資すべきではない一群も浮き彫りにした。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)
日米金融政策の方向性から
しばらく円高圧力が継続か
市場関係者の間で、にわかに今後の円高シナリオを予見する声が強まっている。
高インフレの沈静化に向け、FRB(米連邦準備制度理事会)が急ピッチで利上げを進める中、米国経済は何とか一定の力強さを継続中だ。ただし歴史を振り返れば、利上げは幾度となく、景気後退を誘発する引き金となってきた。
逆風を暗示するかのように、米国債市場では昨年夏以降、2年物国債の金利が10年物国債を上回る「逆イールド」が解消されていない。長短金利の逆転はかねて“景気後退の前触れ”として広く警戒されてきた現象だ。
しかも、3月の米シリコンバレー銀行(SVB)破綻を契機とした金融不安が、先行き不透明感に拍車を掛けている。そこで市場では、FRBが早晩利上げを停止し、年後半にも利下げに転じるのではとの観測が絶えない。
智剣・Oskarグループの大川智宏主席ストラテジストは、「米国の景気後退の進行が主要な経済統計にも顕在化し始めているが、その際注意すべきことは、利上げ停止や利下げ期待の高まりに伴う米金利低下だ」と指摘。そうなればドル安圧力が強まり、対ドルの円相場は円高方向に傾きやすくなる。
一方、日本銀行では植田和男新総裁が緩和路線の維持を表明したが、日本でもインフレが進行する現在、遅かれ早かれ金融正常化に向けた議論が出てくることは避けられない。この先は、「日本国債の金利上昇に向けた可能性が高まるほど、一段と円高圧力を強めることが考えられる」(大川氏)状況にあるのだ。
大川氏は、実際に円高が本格化すれば、株式市場では「円相場と株価の連動性が低く、海外事業への依存度が小さい銘柄の方が底堅い推移が期待できる」と指摘。一方で、円安が株価を押し上げてきた海外依存度の高い銘柄については、今後「苦境に立たされる可能性が高まる」と言う。
では、それぞれ具体的にどんな銘柄が特に影響を受けるのか。
次ページでは、定量的な見地から「円高に強い」一群を浮き彫りにした。TOPIX(東証株価指数)の銘柄を母集団として、円相場(対ドル)と株価の感応度が低く、海外売上高比率が10%に満たない銘柄を抽出。その上で、過去の円相場と株価感応度が低い順に50銘柄をランキングしている。
併せて、上記とは逆に、円高耐性のワーストランキングも明らかにした。ドル円相場と株価の感応度が高く、かつ海外売上高比率が50%以上の銘柄を抽出。その中から、ドル円と株価感応度が高い順に50銘柄を並べ、円高進行時に投資すべきではない外需系企業の一群を炙り出した。