注目テーマをメッタ斬り! “人気株”の勝者・敗者#8Photo by Kohei Takeda

ホテルや旅館の自社予約サイト構築支援を手掛け、昨年11月に新規上場したtripla(トリプラ)。2022年10月期決算で黒字化を果たし、宿泊業DX(デジタルトランスフォーメーション)支援という稀有な業態の新参者として、有力個人投資家からも熱視線を浴びる存在だ。訪日客急回復の追い風も吹く中、海外展開を含む今後の成長戦略の青写真とは。『注目テーマをメッタ斬り!“人気株”の勝者・敗者』(全18回)の#8では、その全貌を高橋和久CEO(最高経営責任者)に直撃した。(聞き手/ダイヤモンド編集部 竹田幸平)

宿泊施設向け特化を強みに
成長を継続し前期に黒字化

――自社のビジネスモデル上の強みを何だと考えていますか。

 ホテルや旅館などの宿泊施設には、幾つかの集客方法があります。一つは公式サイトを通じて、もう一つはエクスペディアや楽天トラベルなどに代表される「オンライントラベルエージェント(OTA)」。また、団体旅行予約のほか、JTBや近畿日本ツーリストのように実店舗を持つ、業界で「AGT(リアルエージェント)」と呼ぶ旅行会社があります。

 当社は、これらの中で、公式サイト向けのDX(デジタルトランスフォーメーション)支援を手掛けています。宿泊施設からすると、旅行客に公式サイトから予約してもらう形が、一番もうかります。OTAやAGTは手数料がかかるし、団体なら割引適用で客単価が下がるからです。

 そのためのツールとして、当社では公式サイト向けの予約システム「トリプラブック」を展開しています。お客が希望する日程や人数で検索し、予約を行う機能ですね。二つ目が、宿泊施設の公式サイトの問い合わせにチャットボットで、自動で回答する「トリプラボット」です(それぞれ宿泊施設の部屋数や問い合わせ件数に応じた月額基本料金=固定収益に加え、予約宿泊数や問い合わせ件数の増加に伴い従量課金分を宿泊施設がtriplaに払う仕組み)

 私は以前、アマゾンジャパンで働いていましたが、Eコマース(電子商取引)では考えられないような複雑なシステム連携の仕組みが、宿泊関係の業界ではスタンダードとなっています。

 飲食店の予約などとはこの点が最も異なります。つまり、宿泊施設向けに特化したソリューションが求められており、トリプラブックはその機能を提供するものです。トリプラボットでは、旅館やホテルに特化するが故に、質問の約95%はAIが回答でき、日本語のほか英語や中国語など5言語に対応。ここから、予約が取れるのも強みとなっています。

 さらに、CRM(顧客情報管理)やマーケティングオートメーション(マーケティング活動の支援システム)のサービスも展開しています。これは通常なら多額のコストがかかる一連の機能を、宿泊施設向けに特化することで、手頃な値段で提供するものです。また、宿泊施設向けQRコード決済システムも手掛けており、それぞれ(導入施設数の増加で増える)固定収益と(取扱高増加で上振れする)従量収益で売り上げを増やすモデルです。

――今年3月に第1四半期(2022年11月~23年1月)決算を発表後、株価が大きく落ち込む場面がありました。

 上場後に初の決算発表だったのですが、正直われわれも慣れていなかったために、決算短信のみ開示する形を取りました。昨年12月に出した今期業績予想に対し、第1四半期の進捗率が25%に達しなかったのですが(注:進捗率は売上高22.4%、営業利益で21.2%)、決算説明資料を1日遅れて開示したこともあり、株主の誤解を生んで、株価が下がる要因となってしまいました。

次ページでは、高橋和久CEO(最高経営責任者)が第1四半期決算での反省を踏まえ、第2四半期決算以降の開示を巡り、新施策を明らかに。その上で、国内外の成長戦略を展望する。類似の業態を展開する企業群は、世界的にもまだ“戦国時代”だという中で、海外展開を巡る詳細も大公開。併せて、アマゾン時代にジェフ・ベゾスCEOから学んだ考え方をどのように経営へ生かしているのか、コンサルティング会社A.T.カーニーでキャリアをスタート後、日本コカ・コーラやフィリップモリスジャパンなど有数の外資系企業を渡り歩いてきた高橋CEOが、訪日客急回復の追い風が吹く中で、「ポストコロナのインバウンド戦略」について語り尽くした。