注目テーマをメッタ斬り! “人気株”の勝者・敗者#9Photo:PIXTA

2040年代にピークを迎えるといわれる、日本の高齢人口。高齢化関連の介護・葬祭のニーズは今後も間違いなく高まるだろう。一方、この業界には、制度改定リスクやコロナ禍の需要シフトが起こり、投資選定も一筋縄ではいかないのが現状だ。特集『注目テーマをメッタ斬り!“人気株”の勝者・敗者』(全18回)の#9では、これらの厄介な問題を逆手に取るビジネスモデルを持つ企業を紹介する。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

高齢化人口は2060年まで高水準
不人気のテーマこそ投資妙味あり

「注目度が高い話題のテーマは短期の投資家も集中するので、中長期で投資をするなら避けた方がいい。むしろ話題になっていないテーマ株こそ投資妙味があり、その一つが高齢化関連銘柄だ」

 そう語るのは、『割安成長株で2億円 実践テクニック100』などの著書があるサラリーマン投資家の弐億貯男(におく・ためお)氏だ。

 弐億氏が高齢化関連銘柄に注目するのは、国内では、今後も高齢化が加速することはほぼ確実だからだ。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口〈平成29年推計〉」によれば、65歳以上の人口は今後も増加を続け、2042年にピークを迎える見込みだ。

 人口だけではない。下図のように、介護の市場規模も高齢化に伴い年々拡大してきた。大和証券エクイティ調査部の関根哲シニアアナリストは「団塊ジュニア世代(1971~74年生まれ)が終末期を迎えるだろう60年ごろまで、高齢化人口は高い水準が続く。介護市場の成長も当然、中長期で大いに期待できる」と見通す。

 一方、高齢化関連銘柄は、冒頭で弐億氏が指摘するように注目度は低い。資産形成のための情報メディア「MINKABU(みんかぶ)」の人気テーマランキングでは、4月25日時点で「葬祭」が第98位、「介護関連」が第154位、「超高齢社会」に至っては第246位と、人気のテーマとは言い難い。

 介護業界が成長市場であるにもかかわらず人気がないのには理由がある。

 その最たるものが、介護報酬の引き下げリスクだ。介護事業者の多くは収入源を介護報酬に依存しているため、一度介護報酬が引き下げられると大損失を被る。実際に、15年度に介護報酬が2.27%引き下げられた後、介護事業者の倒産件数は急増した。

 加えて関根氏は「介護報酬は今後も引き下げ圧力の方が強い。コロナ禍は例外で、政府はまだ決断していないだけだ」と厳しい見通しを隠さない。

 また、深刻な人材難も介護業界の課題だ。厚生労働省の「2025年に向けた介護人材にかかる需給推計」では、今後も介護人材の需給ギャップは年々拡大し、25年には37.7万人の介護人材が不足すると推計している。

 市場の成長とリスクが共存する中、どのような銘柄に投資すればよいのか。次ページでは、「今後は既存のリスクを回避できるサービスが伸びていく」と話す関根氏が注目の銘柄を紹介する。成長市場の中でリスクにさらされる業界大手と、独自のビジネスモデルでうまく回避できる企業はどこか。弐億氏の保有する高齢化関連銘柄も併せて公開する。