FA(ファクトリーオートメーション)・計測器・時計・事務機の四つのサブセクター(副業種)から成る精密機器業界。中でも直近の平均年収が約2200万円に上るFAのキーエンスは、一段の成長に期待大だ。特集『円安・金利高・インフレで明暗くっきり! 株価・給料・再編 5年後の業界地図』(全24回)の#10では、その理由をセクターアナリストが解説。事務機では、M&Aの積極化が再成長の鍵となりそうな姿も浮かび上がってきた。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)
キーエンス年収は日本人平均の「5倍」
さらに成長を継続しそうな理由とは?
平均年収2183万円――。ビジネスパーソンがうらやむ超高年収の高収益企業、キーエンスの勢いが止まらない。6月中旬に同社が提出した有価証券報告書に記載された冒頭の金額は、日本人の平均給与額である433万円(国税庁の2020年分民間給与実態統計調査)の実に5倍以上。海外事業の好調などで2022年3月期は最高益を更新し、年収も前期より430万円増えて過去最高となった形だ。
同社はファクトリーオートメ―ション(FA)業界の雄として、高成長を継続。産業界「最強」ともいわれる営業部隊の人員を拡大しながら順調に成長を続け、22年3月期の営業利益率は実に55%という高水準だ。営業利益(4180億円)は最後に増収増益を達成した19年3月期と比べても3割超大きな額となった。足元の時価総額は約11兆円と、今やトヨタ自動車、日本電信電話(NTT)、ソニーグループに次ぐ4位を定位置とする超優良企業にのし上がったのだ。
詳しくは次ページで業績の5期先までの推移と共に示すが、市場では27年3月期に、営業利益が7500億円規模にまで拡大すると見込まれている。キーエンスが規模を拡大しながらも、この先さらに高効率で稼ぎ続けそうな根拠とは何か。海外は高成長が期待されるが、国内もある明確な理由から、まだまだ伸びしろが大きいという。
また次ページではFAのほか、島津製作所や堀場製作所などの「計測器」、カシオ計算機やセイコーホールディングスなどの「時計」、キヤノンやリコーなどの「事務機」の各サブセクターの動向も分析。それぞれ営業利益の5期先までの予想データや、この5年間で年収水準がどう推移したかを示すとともに、5期先に有望な企業と明暗を分ける要素を明らかにする。事務機ではM&Aの嵐となる予感も?