中国Photo:PIXTA

日本大使館職員と接触した
党機関紙編集者を中国が拘束

 中国共産党系メディア「光明日報」で論説部の副主任を務めた董郁玉氏が、昨年2月、日本大使館の職員と北京市内のホテルで会食した際に拘束され、当局からスパイ容疑で起訴されていることが家族の証言で明らかになった。

 朝日新聞(https://www.asahi.com/articles/ASR4T6K7WR4TUHBI01B.html)によれば、董氏は改革派の論客として知られ、米ニューヨーク・タイムズ紙など外国の報道機関に寄稿した経験もあるという。また、董氏は共産党員ではなく、海外メディアの記者や外交官、学者等の識者と親交があったほか、米ハーバード大の特別研究員のほか、日本の慶応大や北海道大に客員として招かれて勤務したこともあるという。

 董氏は取り調べの際、2010年代前半に日本を訪問した時の行動を詳細に書き起こすよう求められ、日本大使館側との交流についても強い関心を示されたという。

 なお、董氏が拘束された際には日本大使館職員も一時拘束され、日本政府は外交官の身分保護を定めたウィーン条約に違反しているとして、中国側に抗議している。

 先月には、アステラス製薬の社員が中国当局によって不当に拘束され、日中関係がより緊張する中、中国当局は董氏のような中国体制内の事情に詳しい人物と日本側との接触に対し、厳しく対抗する姿勢を鮮明にしている(さらに、現在、中国反スパイ法の改正も審議されているさなかである)。

 実は、日本大使館職員が駐在先において、現地識者と意見交換したり、情勢に関する情報交換などを行うのは当然の業務であり、各国でも公然と行われている。そこには違法性はない。

 また、今回の件に関しては、日本大使館の職員がより機微な情報を収集する対外情報機関のような任務に就いていた可能性は低いだろう。