そうした風通しのいい=心理的安全性の高い環境から、2つの町工場は、イノベーションを繰り返しながら、世界企業へと成長したのです。

いい人間関係は、「言葉」と「話し方」で決まる

 では、どうすれば、心理的安全性の高い環境をつくることができるのでしょうか? 研究によると、次のようなことが重要とされています。

 まずは、当然ながら、「みんなが話しやすい雰囲気をつくる」ことです。そのためには、メンバー同士、とりわけ上司が部下の話に対して、耳を傾ける姿勢が必要です。

 次に、「みんなが自由に発言できる環境を整える」ことです。たとえば、朝礼で、役職が上の人ばかりが話すのではなく、メンバー全員が均等に発言できるような機会を設けることが必要です。

 また、「ネガティブな言葉を控え、前向きの言葉を使う」ことが大切とされます。それによって、チーム全体が前向きな気持ちで、仕事に取り組めるようになるのです。

 というように、心理的安全性を高めるには、円滑なコミュニケーションが必要であり、「話し方」や「言葉づかい」がカギを握っています。心理的安全性を高めるための「話し方」の具体的なフレーズを紹介していきましょう。

さりげないひと言で、意見をいいやすい雰囲気をつくる

×誰か意見はありますか? → ○~さんは、これについてどう思いますか?

 心理的安全性を提唱したエドモンソンは、「心理的安全性が下がる理由」のひとつとして、「邪魔をしていると思われる不安」をあげています。「自分が発言すると、相手の話の邪魔をしていると思われないか」という不安を抱いて、発言しなくなる心理傾向のことです。そうして「無口な人」が増えれば、新しいアイデアは出なくなり、イノベーションは遠ざかります。

 そこで、リーダーや会議の進行役は、あまり発言しない人の言葉を引き出す必要があります。そのシンプルな方法は、「~さんは、これについてどう思いますか?」や「他の方にも伺ってみましょう」と、話を振ることです。「経験豊富な~さんから一言、伺いましょう」と、相手をおだてながら聞いてもいいでしょう。

 そうすれば、議論はさらに活発になるでしょうし、多くの人の意見を聞いておけば、会議後、フラストレーションが残ることも少なくなるという効果があります。