新年度を迎えたこの時期、新たな環境に身を置いた人も多いのではないだろうか。学生であれば入学式、社会人であれば仕事の異動や転勤、様々な変化がある。希望通りの進路に就けた人もいれば、思わぬ結果になって新たなはじまりを迎えた人もいるだろう。この春、過去の「選ばれなかった」ことをテーマにした書籍『あの日、選ばれなかった君へ 新しい自分に生まれ変わるための7枚のメモ』(阿部広太郎)が刊行された。本文より、一部抜粋、改訂して紹介する。

学生の知らない社会人の常識とは?Photo: Adobe Stock

質問には意図が込められている

 就職活動をしていた当時、先輩たちに掛けてもらった言葉に衝撃を受けました。エントリーシートを書いて、OB・OG訪問で社会人の先輩に会いに行くと、時に優しく、時に厳しく先輩たちは伝えてくれます。

「エントリーシートを読んだ人が君の働く姿を想像できるかどうかが大切なんじゃないかな? この質問項目、困難な壁に直面した時にどう乗り越えるかを聞いてるけど、仕事がうまくいかない時にどう立ち向かうかを知りたいってことだと思うんだよね。書くときにそのことを意識してみたらどうかな?」

 質問には意図がある。一つひとつの質問項目の奥には何を知りたいかの意図が込められていることを知りました。
 そして他の先輩が、面接官の心情を代弁して伝えてくれました。

「その他大勢になっちゃダメだ。読み手はとてつもない量のエントリーシートを読む訳だから、おっ、この人は何か違うぞ!と思ってもらうために冒頭にタイトルを付けて惹き込みたいね。審査員は疲れている。そう思っておいた方がいいよ」

 社会人の先輩たちと会話を重ねることで、新しい窓が開いて見える景色が広がっていくような感覚に。そして、話す内容に対する先輩の反応がイマイチで突破口を探している時に掛けてもらった言葉があります。

「社会人ってなんでも知ってる訳じゃないからね。僕らが知らないことを大学生の君は知ってるんだからそれを教えてほしいな。君が今見てることや感じてることをさらさらっと伝えるんじゃなくて、顕微鏡でのぞくように言葉にしてみてよ。そうすると僕ら社会人は食いつくから」

 このアドバイスをもらってから、自分の体験してきたことをリアリティーをもって語れるようになり、社会人の先輩との会話も徐々に弾むようになっていきました。

御礼メールの適切なタイミングとは?

 ある時は愛のある厳しさを感じました。
 金曜日の夕方にお会いしたOB訪問をした社会人の先輩への御礼のメールを、週末を挟んで月曜の昼過ぎにしたところすぐに返信が……。

「遅い。御礼の連絡をするなら早ければ早いほどいいよ」

 感謝の連絡は早い方がいい。本来であれば目の前に現れた大学生に対して何事もなく終わらせるのが一番楽なはずなのに、この先のことを思って所作や基本動作を伝えてくれたことが今でも印象に残っています。

 なお、『あの日、選ばれなかった君へ』では、就職活動における最大の発見、『「自己肯定感」より「自己選択感」』を紹介しています。ぜひ参考にしてみてくださいね。

学生の知らない社会人の常識とは?阿部 広太郎(あべ・こうたろう)
1986年3月7日生まれ。埼玉県出身。中学3年生からアメリカンフットボールをはじめ、高校・大学と計8年間続ける。2008年、慶應義塾大学経済学部を卒業し、電通入社。人事局に配属されるも、クリエーティブ試験を突破し、入社2年目からコピーライターとして活動を開始。「今でしょ!」が話題になった東進ハイスクールのCM「生徒への檄文」篇の制作に携わる。尾崎世界観率いるクリープハイプがフリーマガジン「R25」とコラボしてつくったテーマソング「二十九、三十」を企画。作詞家として「向井太一」「円神-エンジン-」「さくらしめじ」に詞を提供。自らの仕事を「言葉の企画」と定義し、エンタメ領域からソーシャル領域まで越境しながら取り組んでいる。パーソナリティーを務めるラジオ番組「#好きに就活 『好き』に進もう羅針盤ラジオ」はAuDee(オーディー)で配信中。2015年から、BUKATSUDO講座「企画でメシを食っていく」を主宰。オンライン生放送学習コミュニティ「Schoo」では、2020年の「ベスト先生TOP5」にランクイン。「企画する人を世の中に増やしたい」という思いのもと、学びの場づくりに情熱を注ぐ。著書に『待っていても、はじまらない。ー潔く前に進め』(弘文堂)、『コピーライターじゃなくても知っておきたい 心をつかむ超言葉術』『あの日、選ばれなかった君へ 新しい自分に生まれ変わるための7枚のメモ』(ダイヤモンド社)、『それ、勝手な決めつけかもよ?だれかの正解にしばられない「解釈」の練習』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。