共通化することで自分の経験をノウハウに落とせる

 さらに、それを横展開する際のスピード感もすさまじいものでした。日本で成功して、次はインドということになり、インドに日本の成功モデルのエッセンスを伝えることになります。そのとき、ただのやり手の上司だったら、そのエッセンスを自分がインドに伝えるものですが、Fさんは私に伝えさせようとしたのです。

 ここには、海外トップ層の二つの考え方があると思っています。
 一つは、個人に根ざしたマネジメントを徹底するということです。オペレーションまでを含めてうまくいったのは、私のマネジメントが功を奏したからだとFさんは判断したわけですから、そのモデルをプレゼンする役目も私にあると判断したわけです。
 もう1点は、すべてがうまくいったわけではなく、反省すべき項目もいくつかあり、それを整理するのも私の役目だ、と考えていたことです。
 この2点があったからこそ、共通化が自分のノウハウとなったと考えています。

 海外トップ層とのビジネスモデルについての会話のなかでは、よく「リピータブル」という言葉が使われます。再利用性、再現性といったことになりますが、横展開を前提としてビジネスでは、このリピータブルなモデルをつくることが大切だと気づかせてくれたのもFさんでした。

 共通化。この3文字のなかには、安定化や強化といった概念も含まれてくるでしょう。共通化できるビジネスは横展開のなかで互いに安定化し、強化されていきます。成功モデルを次に伝えた日本とインドの関係における私は、共通化のなかで提供者であるととともに受益者ともなる。このようなことがビジネスの横展開では重要だと気づかせてくれたのも彼なのです。