日本では優秀なのに、海外では評価されない。そんな現実がなぜ起こるのか。英語力やMBAを超えた「評価基準」について自らの経験に基づいて解説、話題となっているのが、福原正大氏の『なぜ、日本では本物のエリートが育たないのか?』。今回は、刊行記念として、福原氏と元ソニー会長にして世界で最も知られる日本人ビジネスマン、出井伸之氏との対談、後編をお届けします。(取材・構成/上阪徹 撮影/宇佐見利明)
自分たちを理解すれば、卑下することはなくなる
福原 私は2010年に未来のグローバルリーダーを育成する小中高生向けスクールIGSを設立したんですが、教えるのは、自国文化からなんです。例えば、日本の哲学。そしてそれが、海外の哲学とどう異なるか。
日本の場合、場を大切にする、武道がある、などいろいろあるわけですが、こういうことは学校では教えられない。逆に海外に出て、自分が日本人だということに改めて気がついたという人も多いんです。日本の良さも含めて。
出井 まさに、おっしゃる通りですね。
福原 でも、そうした日本についての見解がきちんと語れないと、何も語れない人間だと海外ではみなされますよね。バリューのない人間だ、と。
出井 あと、大事なのは宗教論ですね。神をどう考えるか。これも大きい。
福原 そもそも文化が違うということですね。
出井 僕はソニーに入って日本で働いた後、大学院に行くためにロンドンに行ったんですが、ちょうどいい先生がいなくて、スイスに行くことになったんです。
ジュネーブで博士課程に進んだんですが、仰天したことがあった。当たり前のようにラテン語が使われるんですよ。授業の最後はラテン語で終わる。ところが、ラテン語をやったことがない僕にはまったく、意味がわからないわけです。今、何を言ったんだろう、って。しかも、教授との面接もラテン語でやっていたんですね。まったく文化が違う。
でも、このとき思い浮かんだのが、ラテン語を日本で考えたら漢文だろうと。それで、漢文で対抗してやればいいんじゃないかと思ったんです(笑)。ちっとも卑下する必要なんてない、と決めたんですね。違う文明から来たんだから、と(笑)。そういうことは、体験しないとわからないんですよ。