日本企業に求められる
インテリジェンス
中国に事業展開している企業や中国市場と関係が深い企業としては、昨今の中国の動向は非常に悩ましいだろう。人権侵害、不当な拘束、法の恣意的な運用など、注意すべきリスクが多いが、未だ国内の大手企業でさえリスクの感度が低い企業が散見される状況である。
経済的に中国との関係を完全に切れないのも事実であるが、主要な技術・情報などの中国からの切り離しや事業の縮小・撤退は当然検討されるべき手段である。
高市早苗経済安全保障担当相のTwitterでは、某大手企業の中国での業務内容について「反スパイ法や技術流出のリスクを避ける為に中国から撤退する日本企業をサポートする業務。土地使用権の残存期間を買い取り他業種で活用したり、設備と現地社員ごと引き継ぐ企業を探したり。ニーズは増えると思いました」とコメントしている。
また、今後は既存の各種デューデリジェンスに加え、地政学的要素や、経済安全保障上の観点を含むインテリジェンス調査が必須になるだろう。
例えば、新規取引先の企業に対し、企業や関連役員が中国共産党の影響下にないかなどの観点や、展開先の現地の商習慣やセキュリティ上の問題、政治動向、地政学的緊張の有無などの情報収集も、より綿密に行われなければならない。
事実、取引先企業と中国共産党系組織との関係の有無や現地情勢・セキュリティ情勢に関する情報提供を求める声が多く聞かれるようになっている。
既に、大企業の多くは自社内にインテリジェンス組織を構築しつつあり、各種デューデリジェンスも当然実施しているだろうが、より経済安全保障の観点を意識したインテリジェンス調査が企業の大小関係なく行われるべきである。
中国を含む各種脅威に立ち向かうには、国が明確な基準・指針を示した上で、企業や社会における自助努力も必要である。
(日本カウンターインテリジェンス協会代表理事 稲村 悠)