2023年1月26日に開催された「ダイヤモンド・オンライン 経営・戦略デザインラボ」のオンラインイベント「複雑・不確実な時代の 新規事業&プロジェクトを成功に導く組織とマネジメント」。パネルディスカッションでは、長内厚氏(早稲田大学教授)、宇野大介氏(ライオン)、島雄輝氏(リクルート)、四家千佳史氏(コマツ)が登壇。前編では、既存ルールが確立している環境下で、新規事業をどのように生むか、仕組みづくりにおける心構えとともに議論が交わされた。(編集/ダイヤモンド・ライフ編集部 大根田康介、撮影/堀哲平)
今の時代のプロマネは
これまでと何が違うのか?
早稲田大学商学学術院経営管理研究科(ビジネススクール)教授 京都大学経済学部卒業。1997年ソニー入社後、映像関連機器部門で商品企画、技術企画、事業本部長付商品戦略担当、ソニーユニバーシティ研究生などを歴任。筑波大学大学院(修士<経営学>)、京都大学大学院(博士<経済学>)で経営学を学び、神戸大学経済経営研究所准教授を経て、2011年より早稲田大学ビジネススクール准教授。16年より早稲田大学大学院経営管理研究科教授。現在は、ビジネス・ブレークスルー大学客員教授やハノイ外国貿易大学客員教授(ベトナム)も務める。YouTubeチャンネル「長内の部屋」でも精力的に配信中。
長内厚(以下、長内) 講演ありがとうございました。非常に生々しいというか、ビビッドなビジネスのお話を伺いました。それぞれ分野の異なるビジネスですが、いくつか共通点があったかと思います。
ライオンの宇野さん(2023年3月時点)は「既存事業に関わる仕事はしない」、リクルートの島さんは「今までの方法や型があり、そのコアコンピタンスをアップデートしていく」、コマツの四家さんは「今までの方法と一緒では難しい、だから出島化した」とおっしゃっていました。
今の時代のプロジェクトマネジメントは、これまでと何が違い、また、どのような困難があるのでしょうか?
宇野大介(以下、宇野) ライオンは製造業のため、いかに効率的に製品を作るかが重要であり、すでに効率化されたシステムが出来上がっています。
その中で新しいことを始めるとなると、既存のシステムに合わないようなことが必ず起こる。それに対し、一個一個「これまでと違う」といわれ、対応するとなると時間がかかって仕方ありません。ですから、「いったん外に出る」という方法になるのかなと思います。
長内 それが「出島」という話にも通じるところでしょうか。
宇野 はい。
四家千佳史(以下、四家) コマツも製造業ですが、全く新しい価値創造をするときは、とにかくやってみて失敗する、しかも、「高速に失敗する」前提です。
ところが、基本的にものづくりというのは、失敗をさせない型になっています。言い換えれば、長年守ってきた会社のものづくりのルールが、新しい価値創造のチャレンジを生ませないような仕組みになってしまっているのではないかと思います。
島雄輝(以下、島) リクルートの場合、トライ&エラーの質というか、目的をきちんと使い分けることを大事にしています。未開拓のマーケットに進出するとき、「ユースケースをたくさんつくる」ことをメインにするのか、自分たちの既知のマーケットで環境が変わったために「正解を探しにいく」のか。
マネジメントでいうと、「失敗してもいい」ということをきちんと評価の中に織り込む、その設計がとても大切です。
例えば、評価軸を「プロジェクト数」に置くのか、プロジェクトの数をこなした結果、「仮説が絞れたこと」に置くのか。トライ&エラーを増やす前提で、その部分を組織長などがしっかりと設計することが必要です。