会話をする男女写真はイメージです Photo:PIXTA

人見知りで口下手、「話しにくい」と言われ、就職活動もうまくいかなかった筆者が、劇団四季で主役を務め、今では多くの人の前で講演・研修する「話し方」のプロに大変身。人を惹きつける話し方を身に付けるには、「話す」より「聞く」を優先させることが大事だと言います。うまい「聞き方」のポイントを紹介します。※本稿は、佐藤政樹『人を「惹きつける」話し方』(プレジデント社)の一部を抜粋・編集したものです。

今に集中して「まず聞く」
人はなかなか話を聞けない

 あなたにお聞きします。

 相手が話している最中に「メリットが感じられない」「結論はまだなのか」「面白くないなぁ」と判断して、以下のような行動をしてしまったことはありませんか?

 ○右から左に聞き流した
 ○興味がある別の情報に意識が飛んでしまった
 ○話の途中でわかったつもりになって、自分の話をかぶせた

 おそらく、身に覚えがあるでしょう。このようなときはまさに話を聞いていません。

 実は、人の話を聞くことは、自分が思った以上に難しいのです。だからこそ、まず聞くを徹底的に意識する必要があります。

 海水浴でビーチボールを海面に置いて手を離したら、ボールはすぐに自分から離れてゆらゆらとどこかに漂っていってしまいますよね。それと同じように、あなたの聞く意識もちょっと気を抜いたらすぐに自分から離れていってしまうのです。

 聞くことができない理由は、実は非常にシンプル。それは、あなたの聞く意識を“今”にとどめることができていないからです。

 では、どのようにすればよいのか。それが、以下の1、2、3です。

 1 今に意識を向けて集中する
 2 未来や過去の出来事や他の興味に意識が向いてしまったら今に戻る
 3 この繰り返し

 以上です。「聞く力」の高い人はこれを知っているか、無意識のうちにやっています。

「次のセリフ」の準備をしていないか

「佐藤君は聞けていないよ。聞かずに、次の自分のセリフのことを考えて、準備してる。自覚はある?」。

 これは私が劇団四季に入ってすぐに、ある先輩からかけられた言葉です。

 私が入団一年目に子ども向けのミュージカルで、幸運にも一言セリフのある役を務めたときのことです。主役のセリフを聞いてから、「それみろ、おれたちをやっつけにきたことに間違いねぇ!」と主役を問い詰めるのが私の役目でした。

 私は、無意識のうちに、今この瞬間ではなく、未来の自分のセリフに意識を向けてしまっていたことに気づきました。間違えるのを恐れて、前のセリフをきちんと聞かず、頭の中に用意した自分のセリフを、順番が来たタイミングで口に出していただけだったのです。