「家賃を抑えると貯金できる」と
賃貸派は主張するが…

 一方、賃貸派の中には「家賃を抑えて、余剰分を貯金した方がいい」と言う人がいる。そういう価値観を否定はしないが、家賃を安くするということは、物件が都心から離れたり、物件のグレードが落ちたりすることを意味する。

 その結果、通勤時間が往復2時間以上と長くなることや、面積の狭さに耐えながら暮らすこともあるだろう。それを我慢したとしても、人は本当に貯金できるのだろうか。余剰資金は、あればあるほど使ってしまう人も多い。

 本当に貯金できたとしても、家賃を削ってためた金額が年間60万円程度であれば、先ほどの住宅ローン控除の還付金70万円を下回ってしまう。

 ただし、持ち家にも注意すべき事項がある。先ほども少し述べたが、それは資産の下落スピードが速いことだ。

 マンションの資産価値の変動はほぼ立地で決まる。年間下落率は都区部で1.2%だが、神奈川県横浜市で2.2%、茨城県では3.4%になる。

 前述したAさんの例では、住宅ローンの元本の減り方を年間2.7%としたが、これを上回るペースで資産価値が下がってしまうと、売ると含み損を抱えるため、売るに売れなくなる可能性がある。

 こうなると、引っ越すには多額の現金が必要になる。だからこそ、持ち家を買うときには、その資産性がどの程度あるかを知っておく必要があるのだ。

 それでも、資産価値下落のリスクに対処できさえすれば、やはり有利なのは持ち家だろう。

 そういえる要因として、最後に賃貸派にとってのバッドニュースをお伝えしておく。都区部の家賃は16年以降上昇し始め、6年間で5%ほど値上がりしている。

 家賃は需給バランスで決まるので、単純に稼働率が高いから値上げされている状況だ。

 こうなる理由は、持ち家価格が高騰しているために買える人が少なくなり、賃貸に住み続けている世帯が増えているからに他ならない。

 直近は年率2%以上のペースで上がっているので、5年後の家賃は今の1割増以上になっている可能性が高くなってきた。

 いわば、現在は家賃20万円の部屋が、築年数が5年も古くなるにもかかわらず、22万~23万円に値上げされるわけだ。賃貸派は、果たしてこれを許容できるだろうか。

 家賃の掛け捨てという地獄から抜けるには、持ち家での積み立ての仕組みに乗り換えるしかないのである。