台湾・損保のコロナ保険危機、政策転換で保険金支払い急増&資本不足に陥った顛末【前編】

新型コロナウイルス感染症対策の優等生といわれた台湾。だが昨年、コロナ保険を提供した損害保険会社が、相次いで資本不足に陥る前代未聞の事件が発生していた。失敗事例を深掘りすると、リスクマネジメントの観点から業態を超えた教訓を得ることができる。(福岡大学教授 植村信保)

ゼロコロナ政策転換で
窮地に陥った台湾・損保会社

 台湾は2022年初めまで新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込み、コロナ対策の優等生といわれていた。

 しかし22年3月以降、感染者の大半が軽症か無症状であることを踏まえ、台湾政府はゼロコロナ政策を転換。コロナ対策と経済活動の両立を目指す政策にかじを切ったところ、それまで1日当たり多くても数百人だった新規感染者数が、4月には1日数万人という水準まで急増した。

 この政策転換の影響が直撃したのが損害保険業界だった。

 台湾の損保業界では、最大手の富邦産物保険や、金融グループとして最大手である国泰金融グループ傘下の国泰世紀産物保険など13社が「コロナ保険」を提供し、人気を集めていた。ところが、ゼロコロナ政策からの転換で感染者数が急増したため、各社の保険金支払いが劇的に増加し、相次いで資本不足に陥るという前代未聞の事件が発生した。

 次ページより、台湾でコロナ保険の販売が急増した背景と、台湾の損害保険会社が陥った危機的状況について、詳しく解説していく。