【プロフェッショナルレポート】
経済価値ベースのソルベンシー規制
とは何か?【後編】

約20年間の検討期間を経て、2026年3月末から「経済価値ベースのソルベンシー規制」と呼ばれる新たな健全性規制の適用が始まった。そこで連載『ダイヤモンド保険ラボ』の「プロフェッショナル・レポート」では、初期の段階から有識者、あるいは金融庁の専門官として検討に関わってきた筆者が、「ESR」と呼ばれる新健全性規制の全体像を明らかにする。後編である本稿では、新たな規制の持つ「三つの特徴」について分かりやすく解説する。(福岡大学教授 植村信保)

機能しなかったSMR
反省を踏まえて新規制を導入

 2026年5月11日に配信した前編『保険業界に新たな健全性規制「ESR」導入!現行のソルベンシー規制を見直すに至ったわけを専門家が徹底解説』では、かつて保険会社が相次いで破綻した歴史を振り返り、この規制の重要性を再確認したうえで、従来の健全性指標であるソルベンシー・マージン比率(SMR)がなぜ機能しなかったのか、その理由を明らかにした。

 従来のSMRには「甘い算出基準」と「金利水準の変動を的確に捉えられない」という大きな弱点があった。その結果、多くの保険会社の健全性が悪化している実態を早期に認識できず、経営破綻を余儀なくされることとなった。

 こうした反省を踏まえ、金融庁による約20年におよぶ検討とフィールドテストを経て、26年3月末からいよいよ「経済価値ベースのソルベンシー規制」が本格導入された。後編となる本稿では、この抜本的な見直しによって具体的に何が変わるのか、押さえておくべき「三つの特徴」に焦点を当てて解説していく。

 では、実際に保険会社の健全性規制はどう変わったのだろうか。「抜本的な見直し」であるため、その見直しは多岐にわたる。詳細は金融庁のサイト「経済価値ベースのソルベンシー規制等について」をご覧いただくとして、次ページでは、拙著『経済価値ベースのソルベンシー規制』を参考にして、押さえておくべき「三つの特徴」について詳述する。