GPUの王者・NVIDIAが大きく
シェアを落とした“危機的状況”
さて、ロジック半導体の分野で今一番注目を浴びている企業が米国のNVIDIA(エヌビディア)です。NVIDIAは現在、GPUで80%以上のシェアを持つといわれています。CPUがさまざまな処理をこなす汎用(はんよう)的なコンピュータの頭脳であるのに対して、GPUは3Dグラフィック処理などにおいて、単純な計算を並列で多数行うという特徴を持つプロセッサーです。
NVIDIAは1993年にGPUに可能性を感じて創業された企業で、当初は複雑な描画処理を行うゲームにフォーカスして事業をスタートしました。歴史を振り返ると、NVIDIAはこれまでに何度か危機的状況を迎えています。
GPUはCPUから命令を受けて動作するので、CPUとの連携が欠かせません。2006年、GPU設計・製造でNVIDIAの最大のライバルだったATIが、Intelに並ぶプロセッサー大手のAMDに買収され、AMD製CPUとの組み合わせでNVIDIA製品が採用されなくなりました。IntelはIntelで、1つのボードにネットワークやグラフィック処理ができるチップを自社で搭載し、廉価で販売し始めます。NVIDIAのGPUは、ハイエンドのゲームユーザーやグラフィッククリエイターを除いて売れなくなっていき、市場が一気に縮小してしまいました。
一般にプラットフォーマーは、他のプラットフォーマーを排除しようとする傾向があります。AMDはCPUではなくGPUが製品の核となることを避けるため、競合のATIを買収してNVIDIAを排除しようとしました。Intelも同様に、自社でオンボードグラフィックスを進めることで、NVIDIAを排除しようとしたわけです。
祖業であるゲームと自動車、そしてモバイル向けのGPU提供を主力事業とするようになったNVIDIA。危機的状況の中で2006年、彼らがリリースしたのが、GPU向けのプログラム開発基盤「CUDA(Compute Unified Device Architecture)」でした。