AIの深層学習に画期的発展を
もたらしたGPUと「CUDA」
先述したとおり、GPUはグラフィック処理のためのプロセッサーですが、並列処理に非常に長けています。単純な計算を大量に高速で行うのに適しているのです。そこでGPUをグラフィック以外の処理にも使えるよう、GPUによる汎用計算(GPGPU)のためにNVIDIAが開発したプラットフォームがCUDAです。
CUDAを使えば、GPUの高い演算性能を利用して、グラフィック以外の一般的な並列計算処理を実行することが可能になります。このCUDAはNVIDIAのビジネスを大きく変え、半導体が重要視される現在の状況にもつながっているといえます。
CUDAを開発したイアン・バック氏は、Silicon Graphicsにグラフィックエンジニアとして在籍した後、スタンフォード大学でBrookというGPUによる並列処理のためのプログラミングモデルを発表しました。その後NVIDIAに入社して研究を続け、CUDAを発表しています。
CUDAとGPGPUが大きな注目を浴び、広く普及したのはAIの深層学習(ディープラーニング)で活用できることが分かったからです。現在、AIは第3次ブームといわれていますが、このブームの発端は2012年に深層学習で起きたブレークスルーにあります。当時トロント大学教授だったジェフリー・ヒントン氏はアレックス・クリジェフスキー氏とともに、画像データベースImageNetを使った画像認識コンテストで飛躍的成果を出し、大差で優勝しました。そのときに使ったのが、GPUとCUDAを活用した深層学習モデルです。
ジェフリー・ヒントン氏はその後AI研究の第一人者としてGoogleでAI研究に携わってきましたが、今年5月に「AIの危険性について語るため」としてGoogle退職を発表し、話題となった人物でもあります。