アクティビストとの対話は、最もやりがいのある仕事
日本のとある有名企業の会長さんが海外IRで面談した投資家の若いファンドマネージャーの横柄な態度に怒り、面談を途中で打ち切って退席した、逆に、米国西海岸のある投資家が面談冒頭に強く主張した株主還元案に対し、日本企業CFOが不同意の返答をしたところ、10分足らずで面談を打ち切った、という話を仄聞したことがあります。
お互い真剣勝負でみずからの信じる経営戦略や株主還元方針を議論するとヒートアップすることもありますが、個人であれ、ファンドであれ、株主になっていただくことに、「御恩と感謝」を片時も忘れないことは、上場企業のCFOとしては当然守るべき原理原則です。
私は、さまざまな経験から、「アクティビストファンドは、『究極の投資家』である」と考えています。すなわち、投資した自分のお金(マイマネー)からのリターンを最大化することにこだわり、株主としての権利をフルに活用し、自分たち株主の代理人である取締役にしっかり執行サイドを指導・監督するよう求める、というのは、アクティビストに限らず、投資家が本来持つべき姿勢です。
現代の金融資本主義の頂点に君臨するのが資産運用会社・ファンドだとすれば、そのなかでもアクティビストは、資本主義が生まれた頃の生々しい「野性」の魂、アニマルスピリッツを具備している存在です。
アクティビストは、「金も出すが口も出す」という株式会社が生まれた頃の原型に近い投資家であり、同時に知的に武装された現在最も活発で影響力のある投資家です。彼らと対話するCFOは、冷徹な計算に裏打ちされた「企業の将来の夢」を投資家に語る役割を担い、そのための戦略や資本配分方針を投資家に説明し、共感してもらうミッションを負っています。
CFOである私にとって、株主・投資家のなかでも最もアニマルスピリッツにあふれ、資本主義の「野性」を残しているアクティビストファンドとの対話は、最もエキサイティングでやりがいのある仕事です。
※この記事は、書籍『CFO思考』の一部を抜粋・編集して公開しています。