「言語化のコスト」をすすんで払う側に回ろう

安達:たとえば、「とりあえず打ち合わせしましょう!」と、具体的な打ち合わせ内容が決まっていないのにすぐに会議をしたがる人や、「とりあえず、相談しよう!」と、自分の考えを整理せずに、すぐに上司に相談したがる人がいますよね。自分一人でなんとかするより、話した方が早いし、いいアイデアも出やすいから、まず声をかけよう。そう思う気持ちもわかります。

 しかし、「話した方が早い」のは、「言語化する」というコミュニケーションにおいて最も労力のかかるプロセスを、話を聞いてくれる相手にも負担してもらっているからなんです。

 ぼんやりとした質問を投げかけられた側は、相手の話を整理し、考え、自分の中で意見をまとめ、「これこれこういう理由で、私はこの案がいいと思います」と言語化しなくてはなりません。

 自分ひとりで言語化する必要がない状態はとてもラクですし、効率よく仕事が進んだような気になりますが、言語化のコストを相手に支払ってもらっている限り、「頭のいい人」として認識されることはありません。

 頭のいい人は、総じて言語化能力が高いです。それは、言語化のコストを払う側にすすんで回ろうとすることで、日々のコミュニケーションの中で言語化能力が磨かれていくからなんです。また、言語化コストをこちらが負担することで、相手に「できる人だな」と思ってもらえます。

 営業メールも同じです。「イエス」「ノー」さえ伝えればOKのところまでこちらが整理しておき、さらに、「私はこちらのほうがいいと思ったのですが」と、自分の意見も付け足しておく。自分の意見や仮説、具体例を付け足すのも、言語化コストをこちらが支払う行為です。

 そこまでやっておけば、クライアントも少しの労力だけで決断できますから、その分、返信率も上がりますし、「この人は、私のことをちゃんと考えてくれてるな」と、信頼関係にもつながるはずです。

【メールの書き方で分かる】「考えている人」と「思考停止している人」の決定的な違い安達裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役
1975年生まれ。筑波大学大学院環境科学研究科修了後、理系研究職の道を諦め、給料が少し高いという理由でデロイト トーマツ コンサルティング(現アビームコンサルティング)に入社。品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事し、その後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。大阪支社長、東京支社長を歴任したのちに独立。現在はマーケティング会社「ティネクト株式会社」の経営者として、コンサルティング、webメディアの運営支援、記事執筆などを行う。また、個人ブログとして始めた「Books&Apps」が“本質的でためになる”と話題になり、今では累計1億2000万PVを誇る知る人ぞ知るビジネスメディアに。

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頭のいい人が話す前に考えていること