グローバルミニマム課税は“欧州版+α”に縮小!?トランプ政権離脱で「国際課税合意」漂流Photo:PIXTA

ITなど巨大多国籍企業の税逃れ封じ
「米国第一」で国際合意を離脱

 気候変動対応の国際的枠組みのパリ条約や世界保健機関(WHO)、国際人権理事会などの国際機関からの離脱や資金拠出停止を相次いで打ち出したトランプ政権だが、バイデン政権時代の米国も参加し、経済協力開発機構(OECD)などが取り組んできたITなどの巨大多国籍企業の税逃れに対する課税強化の国際合意からも離脱を表明した。

 合意の二つの柱の一つであるグーグルなどの国境をまたいでサービスを提供するIT巨大企業に対して、「市場国」が法人税をその国での売り上げに応じて課税できるようにする新たな多国間条約(MLC)の締結が、米国の離脱で不可能になっている。

 また多国籍企業に対して各国が協調して最低15%の税率で課税する「グローバルミニマム課税」も、関連の国内法を立法化しているのは現状ではEU(欧州連合)諸国に偏っており、米国や中国が導入する見通しはないなど、グローバルな導入は宙に浮いたかたちだ。

 それどころかトランプ政権は、すでに仏英など欧州各国が独自措置としてIT企業に課税しているデジタルサービス税を「外国の差別的な税制」として問題視し、対抗措置を検討する構えで、米国のIT多国籍企業の利害を守る姿勢を鮮明にしている。

 EU内では、米国と妥協を図る声と米国の動向によっては報復措置を検討する声も上がる。

 相互関税や自動車などへの個別品目関税などトランプ関税をめぐる各国とトランプ政権での見直し交渉が進められているが、どのような結果になるかがまったく見えていないなかで、国際課税をめぐる綱引きは世界の新たな火種になる可能性がある。