経済産業省が2018年に公表した『DXレポート』と、その続編である『DXレポート2』、追補版の『DXレポート2.1』『2.2』。これらのレポートが示すベンダーと企業との新しい関係とは。また、その先にある「デジタル産業」とは何か。レポートを読み解きながら解説する。(編集・ライター ムコハタワカコ)
社会全体でデジタル化が進む中、企業もデータとデジタル技術を駆使したデジタルトランスフォーメーション(DX)によって、新たな価値を産み出すことが求められている。前稿『歴代『DXレポート』を改めて読み解く。なぜ緊急かつ重要なのか?なぜ誤解が生まれるのか?』では、経済産業省が公表した『DXレポート』(初代レポート)、『DXレポート2』を読み解きながら、デジタル変革による競争力強化の前に立ちはだかる課題を確認した。
初代レポートの改訂版にあたるレポート2は、企業が持つ「DX=レガシーシステム刷新」の誤解に強い懸念を表明。コロナ禍で待ったなしとなった事業変革への道筋を示した。その中長期的対応の1つとして、レポート2では従来の委託・受託による開発やユーザーとベンダーという関係性の見直し(共創の推進)について触れている。
レポート2の追補版にあたる『DXレポート2.1』と『DXレポート2.2』では、さらにデジタル社会の実現に必要となる機能を社会にもたらす産業を「デジタル産業」と定義した。
本稿ではレポート2以降で示された「ユーザー企業とベンダーとの新しい関係」、そしてその先にある「デジタル産業」について、詳しく見ていきたい。
丸投げ・提案丸呑みの「低位安定」では
デジタル競争は勝ち抜けない
日本では、IT人材不足を理由にユーザー企業がベンダー企業に丸投げ、つまり要件定義から請け負わせるケースも少なくない。初代レポートはこれを「何を開発するかベンダー企業に決めてくれと言っていることと同じ」で、「要件を確定するのはユーザー企業であるべきことを認識する必要がある」と指摘する。
また、ベンダーに業務委託するにあたって結ばれる請負契約や準委託契約において、それぞれの責任範囲や作業分担などが明確になっていないことも多い。こうしたことは損害賠償請求訴訟などのトラブルにつながる。