また、デジタル技術における強みを活用し、新しい価値を提案するビジネスやサービスの提供主体を目指すことも期待されるという。具体的には、ビジネス展開に必要な、人材・技術・製品やサービスなどのさまざまなリソースを提供する企業(上図の②)、業種・業界におけるデジタルプラットフォーム(バーティカルSaaS)を提供する企業(上図の③)、さらには自社で開発した新たな製品・サービスにより、直接社会へ価値提案を行う企業(上図の④)へと進化していくことなどが挙げられている。

個社単独ではなく産業全体で取り組む
日本型のデジタル変革

 ユーザー企業とベンダー企業がともに低位安定の関係にある日本では、個社単独でのDXが困難だ。レポート2.1では「行動指針を個社から産業全体に広げ、同じ価値観を持つ企業同士が相互に高め合っていくような仕組みが考えられる」として、産業全体での変革の必要性を訴えた。そこで目指すべき産業の姿として示されたのが、デジタル産業である。

 デジタル産業を構成する企業は価値創造にデジタルでもたらされた強みを活用し、それらを介して他社・顧客とつながり、エコシステムを形成する。デジタル産業は委託・受託によるピラミッド型ではなく、ネットワーク型の構造を持つ。

                デジタル産業の業界構造

『DXレポート』が促すベンダーと企業の新しい関係性とは?出典:経済産業省『DXレポート2.1(DXレポート2追補版)(概要)』
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 既存産業と比較すると、デジタル産業はソフトウェアやインターネットなどの技術によりグローバルにスケール可能で、労働量によらない、資本の大小や中央・地方の別なく価値創出に参画できるという特性を有する。

 デジタル産業を構成する企業は4つに類型化できる。これは、ベンダー企業が目指すべきとしてレポート2で示されていた方向性(①〜④)に対応する。

1. 企業の変革を共に推進するパートナー

 新たなビジネスモデルを顧客とともに形成。DXの実践により得られた企業変革に必要な知識や技術を共有し、レガシー刷新を含めたDXに向けた変革を支援する。

(例)コンサルティング事業者:経営トップから一気通貫で企業の変革を推進。組織の意識改革や再編、運用・保守を統合的にサポートする。顧客とのDX専門会社を設立することも。