相続やそれに伴う骨肉の争い“争族”対策に頭を悩ませる人は少なくない。そんな人には、生命保険を活用した相続術が強力な武器になる。商品の中には、初めから生前贈与を目的に設計されたプランも存在する。特集『[激変]生保・損保・代理店 保険大国の限界』(全22回)の#6では、知っているようで意外と知られていない生命保険の相続活用術を伝授する。(ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)
相続対策で使い倒そう
生命保険の三つのメリット
なぜ資産を持つ高齢者が、銀行窓口などで一時払い終身保険を契約するのか?その答えは、生命保険が資産家の人生最後の悩み、自らの死後に降りかかる相続税に多大な節税効果をもたらすからだ。
また相続税が発生しない中間層でも生命保険を活用することで、自らの遺志を示しながら、相続によって引き起こされる家族同士の争い、“争族”を回避できる可能性を高められる。
生命保険による相続対策は三つある。すなわち、(1)相続税対策、(2)納税対策、(3)争族対策だ。
まず(1)相続税対策については、そもそも生命保険だけに認められた基礎控除と併用できる非課税枠がある。
その非課税枠は「500万円×法定相続人の数」で、法定相続人が例えば3人ならば計1500万円とかなり大きい。現預金の一部を保険に切り替えることで、非課税枠を利用でき、かつ現預金などの課税対象額を効果的に圧縮できる、というわけだ。
また保険金は現金で支払われるため、すぐに納税資金に充てられるという点で(2)納税対策としても有効だ。
そして(3)争族対策では、受取人を指定できる生命保険は遺産分割の対象外となる点が重要となる。つまり遺産争いが起きても、他の相続人の同意は必要でないため、確実に受け取ることができる。
以上のように、相続における生命保険の活用には大きなメリットがある。だが、基本的な注意事項として、誰が保険料を負担し、誰が保険金を受け取るのかで課税される税金の種類が変わり、課税額も変わることを知っておこう。
保険金の課税で一番有利なのは、前出の非課税枠がある相続税。次いで、所得税の対象となる契約方法も「一時所得」としての課税なのでかなり優遇される。相続税の非課税枠を超える生命保険に加入しているケースなどで検討したい。
最後の贈与税の対象となる加入方法は通常、税額的に最も不利となる。だが、贈与税の年間110万円までの非課税枠を活用した生命保険の節税スキームもある。
次ページでは、その節税スキームの詳細と共に、通常は煩雑な手続きが必要な生前贈与を至極簡単に行える専用の保険商品を紹介しよう。