損保代理店の収入を決める手数料ポイント制度を巡り、損保会社と代理店の確執が深まっている。一方で、損保会社が売り上げの大きい超大型代理店である大手ディーラーに対しては便宜を図るなど、小規模代理店と損保会社の溝は広がるばかりだ。特集『[激変]生保・損保・代理店 保険大国の限界』(全22回)の#15では、求める代理店像について、損保会社側はどのように考えているのか。大手4社の社長に直撃した。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)
統廃合が進む損保代理店
募る代理店たちの不満
自動車保険や火災保険などの販売において、代理店制を敷く損害保険業界。その代理店は、専業の損保代理店と、兼業の自動車販売店や自動車整備工場などに大きく分かれている。
専業の損保代理店はプロ代理店とも呼ばれ、損保営業のプロフェッショナルだが、規模は比較的小さい。ある大手損保のデータによれば、プロ代理店の年間収入保険料は平均約9000万円。6年前に比べて収入は約3割増えているが、一方で代理店数は1割強減っている。代理店の統廃合が進み、大型化していることがよく分かる。
代理店主の高齢化による自主的な廃業に加え、業務品質向上への体制整備が整わないなど、統廃合の背景にはさまざまな理由があるが、損保会社の意向が強く働いているのは間違いない。
まずは、代理店の統廃合による業務の効率化だ。全国にある代理店をフォローするために、損保会社は支店を全国に構えているが、代理店が統廃合すれば、損保会社の拠点数や人員数の削減につながり、業務の効率化ができる。
そして、代理店が担う役割の高度化だ。大手損保4社の社長がそれぞれ求める代理店像については後述するが、自動車保険や火災保険の販売だけでなく、事故発生の予防や事故発生後のリカバリーに加え、サイバーリスクなど新種保険の販売拡大などを代理店に求めている。
自動車保険と火災保険で売り上げの約7割を占める国内市場は、人口減少によって今後拡大する余地は少ないからだ。となれば、競合他社とのシェア争いにならざるを得ず、代理店がいかに顧客との関係性を深めつつ、サービスの拡充を図るかが勝負になってくる。
故に、小規模代理店ではこれらの課題に対応しにくいと考え、損保会社は代理店の大型化を推し進めているわけだ。
ここで、かねて問題視されているのが、代理店の統廃合の進め方だ。過去に問題視された損保会社主導の強引な統廃合は、日本共産党の前参議院議員である大門実紀史氏が行った10回に及ぶ国会での質問などにより、なりをひそめた。だが、依然として代理店手数料を損保会社が一方的に決めて、何かと問題になることが多い「手数料ポイント制度」や、規模の大きい代理店である自動車販売店などへの優遇ぶりに対して、代理店の不満は募るばかりだ。
次ページでは、大手損保4社の社長が代理店について何を語ったのか、そして手数料ポイントを巡る諸課題、自動車販売店など大規模代理店に対する大手損保の優遇ぶりについて述べていこう。