4人のビジネスマン写真はイメージです Photo:PIXTA

6度の転職を経験してキャリアを構築し、複数企業の社長を歴任してきた石合信正氏は、職を“転がる”転職ではなく、自分自身を発展させていけるような“展職”を提唱する。近年、転職に関する相談が寄せられるなかで「転職先で思っていたよりも活躍できずキャリアアップにつながらなかった」「好条件だったが入社してみたら社風が合わなかった」といった経験談も多いという。キャリアアップへの第一歩を踏み出す前に、現状を見つめ直し、将来を具体的に思い描くことの重要性について、石合氏の著書『展職のすすめ 人生のバリューを上げるキャリアアップ転職の秘訣』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部抜粋し紹介する。

中長期的な展望に立った
「展職」を目指す

 いまやインターネットで検索すれば、たくさんの転職情報に気軽にアクセスすることが可能です。転職活動をサポートしてくれる大小さまざまな転職エージェント企業も存在し、誰もが簡単に転職先を見つけられる時代になりました。新聞の求人広告の小さな文字を食い入るように拾い読みしていた私の時代に比べ、本当に便利な時代になったと思います。

 喜ばしいことに職務内容を明確に規定したジョブ型の求人がわが国でも増えています。そのため転職が自分のキャリアを活かせるものかどうか求職者側も判断しやすくなり、より多くの人が自分のスキルアップやキャリアアップのための転職にチャレンジできるようになりました。

 ただし昨今の転職市場を見ていて気になる点もあります。それは転職があまりにも簡単かつスピーディーに成立してしまうため、転職自体を軽く考えてしまう風潮が見られることです。

 本来の転職は自分の人生を左右する重大な転換点であるはずなのに、もし今度の転職がうまくいかなかったとしても、また転職すればいいと安易に考えてしまう人も多いのではないかと危惧します。なかには、まるでテレビゲームをリセットするかのように自分のキャリアも簡単にリセットできるという大きな勘違いをしてしまう人さえいるかもしれません。

 また転職活動があまりにスピーディーに進んでしまうために、自分のこれまでのキャリアについて真摯に振り返ったり、キャリアアップを含めた中長期的な展望についてじっくり考えたりする人も少なくなっている気がします。

 転職先の選択肢も増えて誰もが転職しやすくなった時代だからこそ、しっかりと自分の将来を見据えて悔いのない転職先を慎重に選ぶことが大切です。職を“転がる”転職ではなく、自分自身を発展させていけるような“展職”を一人でも多くの方に経験してほしいと願っています。

会社選びの基準は
「最低3年続けられそうか」

 短期間に何度も転職を繰り返す人がいます。転職して半年も経たずに離職する人に話を聞いてみると、たいてい次のような答えが返ってきます。

「自分はまだ20代。求人はいくらでもあるから、『合わない』と感じた会社にいつまでもしがみついているのは時間の無駄。それよりも自分に合う会社を一刻も早く見つけて、その会社に末永くお世話になったほうがいい」

 一見もっともらしい理由に思えます。しかし私から見れば非常に危険な考え方なのです。