もしあなたが職場の人間関係から逃げたい一心で転職を希望したとしても、転職は問題解決の手段になりません。転職のアクションを起こす前に信頼できる上司や同僚、あるいは職場トラブルを扱っているNPOやキャリアカウンセラーに相談するなど、解決に向けてまずは自分なりに努力すべきです。その結果たとえ問題が解決しなかったとしても、問題解決に向けて取り組んだあなたの努力と経験は今後なんらかの形で次につながるはずです。転職を考えるのはそれからでも遅くありません。

3年後・5年後・10年後を
シミュレートする

 転職すべきか今の会社にとどまるべきか。これは一度でも転職を考えたことのあるビジネスパーソンにとって頭を悩ます永遠の問題といえます。

 例えば現在勤務している会社がブラック企業であるとか、業績不振で自分がリストラ対象にされているなどといった外部要因があれば、100:0で転職すべきとすぐに結論が出ます。

 しかし実際にはそこまで極端なケースは極めてまれであり、ほとんどの場合○○の面ではA社のほうが条件はいいけれど、▽▽の面では今の会社のほうが条件がいいなどと簡単には答えが出せないのです。転職は人生の一大事であり選択を間違うと人生に大きな影響が出る可能性が大きいですから、どうしても慎重に考えざるを得ません。

 私も最初の転職のときは悩みに悩みました。最終的に当時勤務していた住友重機械工業を退職してドイツの製薬・化学メーカーのバイエルに転職しましたが、実は国内の不動産会社や外資系保険会社、広告代理店なども最終面接まで進んでいました。どの会社に転職するべきか、あるいは転職せずに新卒入社した会社に残るべきか、いくら考えても答えはなかなか出ません。そこで私は分かっている範囲で、今の会社に残った場合と比較して、A社 or B社 or C社に転職した場合の、3年後・5年後・10年後の収入や状況をシミュレートしてみることにしました。

 まず現在の会社に残った場合は一定の確度での情報収集が可能です。社内の人脈を通じて自分より3年先輩・5年先輩・10年先輩に会って話を聞くことで3年後・5年後・10年後のボーナスを含む自分の年収や状況をある程度予測することができました。それと同時にA社、B社、C社については、周辺情報や面接時の質問などで年収の推移や昇進昇格の状況を想定しました。