LIXILはトイレ、バス、キッチンなどの水回り製品と、窓やドア、エクステリアなどの建材製品を軸に多種多様なブランドを有し、150以上の国と地域で事業展開するグローバル企業だ。同社では、住まいにおける豊かな価値創造のために、「デザインの総合力」をキードライバーとする変革を進めている。主に建材製品を扱うLIXIL Housing Technologyで商品開発・デザイン本部長を務める羽賀豊氏に、デザイン組織の人づくり、仕組み作りの特色を聞いた。(聞き手/音なぎ省一郎、構成/フリーライター 小林直美)
デザインを中心に、組織とプロセスを変革
──LIXILのデザインといっても、そのイメージはグループ内の多くのブランドによってつくられています。それを支えるデザイン組織の全社的な位置づけをご紹介ください。
LIXILグループ全体にデザインとブランディングで横串を通す組織としては、CDO(Chief Design Officer)のポール・フラワーズが率いるLIXIL Global Designがあり、世界の主要都市にある六つのデザインスタジオを統括しています。
日本国内では、INAXなどの水回りのブランドを展開している「LIXIL Water Technology Japan」と、TOSTEMなどの住宅建材や外構を扱う「LIXIL Housing Technology」のそれぞれにデザインセンターがあります。二つのセンターは組織としては別ですが、どちらも東京のデザインスタジオを拠点としており、実質的な活動はかなり融合しています。
──このうち、LIXIL Housing Technologyのデザインセンター長が羽賀さんなのですね。
そうです。併せて、商品開発部門、ビジネスインキュベーションセンター長も兼任しており、さらに、この3部門を束ねる「商品開発・デザイン本部」の責任者でもあります。デザイン、商品開発、新規事業開発の三つの機能を一体化することで、高付加価値な商品をスピーディーに生み出していくのが狙いです。
──デザインが開発と一体化しているというのは、製品やサービスのデザインだけでなく、価値創出の役割も担っているということでしょうか。
デザイナーは「かくあるべし」という理想の姿から発想するので、イノベーションの原動力になりやすいですし、アイデアを可視化して周囲の理解を促し、チームを動かすのも得意です。こうした力を最大化するために、組織の形だけでなく商品開発のプロセスも変革し、デザイナーが初期から参画できるようにしました。
加えて、PDCAサイクルがきちんと回るように、「ステージゲート システム」という評価・承認システムも導入しています。プロジェクトが立ち上がると、研究開発から商品化までの過程をステージに分け、ステージごとに評価・審議の「ゲート」を設けるというもので、その中でもデザイン部門の長がゲートキーパーとして進捗と質を評価する仕組みを取り入れています。