『DXレポート』に見る日本のDXの現在地、理想の組織と人材はどこにあるのか?DX人材や組織の目指すべきあり方とは?日本のDXの現在地を探る(写真はイメージです) Photo:PIXTA

経済産業省が2018年に公表した「DXレポート」と、その続編である「DXレポート2」、追補版の「DXレポート2.1」「2.2」。各レポートが示す、DX人材や組織の目指すべきあり方を読み解く。また、アンケートやDX白書などのデータやAIなどの最新技術情報から、日本のDXの現在地を探る。(編集・ライター ムコハタワカコ)

 社会全体でデジタル化が進む中、企業もデータとデジタル技術を駆使したデジタルトランスフォーメーション(DX)によって、新たな価値を産み出すことが求められている。本シリーズの始めに「歴代『DXレポート』を改めて読み解く。なぜ緊急かつ重要なのか?なぜ誤解が生まれるのか?」では、経済産業省が公表した『DXレポート』(初代レポート)、『DXレポート2』を読み解きながら、デジタル変革による競争力強化の前に立ちはだかる課題を確認した。

 また前稿「『DXレポート』が示したベンダーと企業との新しい関係性とは?」では、レポート2で触れられた従来の委託・受託による開発やユーザーとベンダーとの新しい関係、レポート2の追補版にあたる『DXレポート2.1』と『DXレポート2.2』で定義された、デジタル社会の実現に必要となる機能を社会にもたらす「デジタル産業」について、詳しく見ていった。

 本稿ではまず、レポート2で触れられた、ジョブ型人事制度の拡大とDX人材の確保について、目指すべきあり方を考察。さらに読者アンケートや『DX白書2023』などのデータから日本のDXの現在地を探る。

DX人材採用では求める人物像を
明確に設定して周知すべし

 DX推進のための組織のあり方やDX人材の確保について、各レポートはどう触れているのか。初代レポートは経営層のDXへのコミットが薄い点や、事業部門と情報システム部門との連携不足を課題として挙げていた。DX推進がベンダー頼りで、従来システムの運用・保守ができる人材が枯渇していることに関連して、一般企業がエンジニアの確保と教育が困難だという点も、初代レポートでは問題としている。

 企業の経営陣はDX推進にあたり、どう動くべきか。レポート2.2では、デジタル産業への変革に向けたアクションを企業へ提示している。具体的には「デジタルを省力化・効率化ではなく、収益向上に活用する」「DX推進にあたって、経営者がビジョン・戦略だけでなく『行動指針』を示す」「個社単独ではなく、経営者自らの価値観を外部へ発信し、同じ価値観を持つ同志を集めて互いに変革を推進する、新たな関係を構築する」の3点である。