DX人材を確保する方法は、外部からの採用と内部での育成の2通りが考えられる。採用するなら、どんな人をどう採用すればよいのだろうか。大事なのは、自社のDX人材がどのような人物であるべきか、明確にしておくことだ。

 レポート2にはDXを推進する理想の人材として、「構想力を持ち、明確なビジョンを描き、自ら組織をけん引し、実行することができるような人材が求められる」とある。またDX推進において、「企業が市場に対して提案する価値を現実のITシステムへと落とし込む技術者の役割が極めて重要である」としている。

 求める人材を設定したら、これを周知することも大切だ。情報処理推進機構(IPA)が2023年3月に公開した『DX白書2023』によれば、DX人材像を周知していない企業が8割以上を占め、そもそも求める人材像を設定していない企業も4割に上る。同白書によれば、DX人材の不足は量的にも質的にも進む傾向にある。求人市場でのアピールだけでなく、社員などのコネクションを生かした「リファラル採用」などにより、獲得の手段を広げる必要もあるだろう。

内部人材の育成ではOJTも大切
アジャイル開発の実践も効果あり

 レポート2は「技術者のスキルの陳腐化は、DXの足かせとなることもある」とも指摘し、内部の人材の継続的な育成支援も重視する。「常に新しい技術に敏感になり、学び続けるマインドセットを持つことができるよう、専門性を評価する仕組みや、リカレント学習(生涯にわたる学習)の仕組みを導入すべき」と述べるほか、「副業・兼業を行いやすくし、人材流動や、社員が多様な価値観と触れる環境を整えることも重要」としている。

『いちばんやさしいDXの教本』著者の亀田重幸氏は、「研修も大事だが、実地で学ぶことが大切」と筆者の取材に対し、語っている(『DXはなぜやるべきか?どうして躓くのか?「基本のき」を専門家がやさしく解説』)。ヘッドハンティングなどで外部から専門性の高い人材を積極的に採用すると同時に、内部でも若手がさまざまな業務で経験を積んでスキルを広げていくことで、DXを進められる人材が育つという。

 また初代レポートは「アジャイル開発の実践そのものが人材育成になる」と述べている。ユーザー企業の人材は開発手法を学ぶことができ、ベンダー企業の人材は開発を通じて業務への知見を得られるという点で、DX人材の育成に有効だという。