セブン&アイPhoto:PIXTA

新型コロナウイルス禍が落ち着き始め、企業業績への影響も緩和されてきた。だが、円安、資源・原材料の高騰、半導体不足といった難題がいまだに日本企業を苦しめている。その状況下でも、企業によって業績の明暗が分かれているが、格差の要因は何なのか。上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回はセブン&アイ・ホールディングスやローソンなどの「コンビニ/スーパーマーケット」業界4社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)

そごう・西武売却が無期限延期でも
セブン&アイが最高決算

 企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下のコンビニ/スーパーマーケット業界4社。対象期間は2022年11月~23年3月の直近四半期(パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスは23年1~3月期、その他3社は22年12月~23年2月期)としている。

 各社の増収率は以下の通りだった。

・セブン&アイ・ホールディングス
 増収率:14.9%(四半期の営業収益2兆9875億円)
・ローソン
 増収率:42.8%(四半期の営業総収入2512億円)
・イオン
 増収率:5.7%(四半期の営業収益2兆3950億円)
・パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(ドン・キホーテなど)
 増収率:5.7%(四半期の売上高4788億円)

 コンビニ/スーパーマーケット業界の4社は、いずれも増収で着地した。中でも、ローソンは4割超の大幅増収だ。

 ただしローソンの増収要因は、23年2月期に行った「収益認識に関する会計方針」の変更によるところが大きい。今回の方針変更によって、22年12月~23年2月期におけるローソンの営業総収入は569億円上乗せされている。

 この影響を除いた場合、ローソンの営業総収入(22年12月~23年2月期)は1943億円となり、前年同期からの増収率は10.5%まで下がる。

 一方、セブン&アイ・ホールディングス(HD)やイオンも23年2月期に同様の会計方針変更を行っているが、両社では従来の手法で算出した場合よりも営業収益が減額されている。そうした事情から、必ずしも「ローソンの独り勝ち」とは言えないため注意が必要だ。

※パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(HD)は22年6月期に会計方針を変更済み

 その条件下で2桁増収を果たしたセブン&アイ・HDだが、足元では「そごう・西武」を米投資ファンドに売却する計画が無期限延期となり、事態は混迷を極めている。総合スーパー「イトーヨーカ堂」の大量閉店計画も進行中だ。

 それでも全社の業績は絶好調で、通期累計の決算では増収増益を達成。売り上げ・利益の両方で「過去最高」を更新した。

 では、好業績のセブン&アイ・HDにおいて、そごう・西武を含む「百貨店・専門店事業」やイトーヨーカ堂を含む「スーパーストア事業」の現状はどうなっているのか。また、両事業が不振の中、セブン&アイ・HDを最高決算に導いた事業は何か。

 次ページ以降では、各社の増収率の時系列推移を紹介するとともに、セブン&アイ・HDの業績について詳しく解説する。