流通大手セブン&アイ・ホールディングスの株主総会が5月25日に開かれ、アクティビストの米投資ファンド、バリューアクト・キャピタルの株主提案が否決された。焦点となっていた井阪隆一社長らの退任要求は辛くも退けられたが、経営トップの首が狙われるリスクは、セブン&アイ以外の大企業でも高まっている。特集『激安株を狙え』(全13回)の#11は、その背景に迫る。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)
“物言わぬ株主”の機関投資家が豹変
大企業経営者も退任を迫られる時代に
「株主の約4分の1が取締役再任に反対した事実を重く見るべきだろう。セブン&アイ・ホールディングスの時価総額の4分の1といえば軽く1兆円を超える。その規模の株主が会社提案に反対したのだから、他の大企業経営者も肝を冷やしたのではないか」
セブン&アイ・ホールディングスの井阪隆一社長ら会社提案の取締役全員が選任された5月25日の株主総会。米アクティビスト(物言う株主)のバリューアクト・キャピタル・マスター・ファンドが求めた事実上の解任提案は退けられたが、市場関係者は井阪氏に対する賛成比率が76.36%だったことに着目する。
例えば英国では、株主総会で20%以上の反対票を受けた場合、今後の対応策などの説明が求められる。つまり80%以上の賛成率確保が一つの目安だ。バリューアクトのセブン&アイ株の持ち分が4.4%程度だったことを踏まえれば、大手機関投資家を含む少なくない株主が井阪氏の再任に反対したことがうかがえる。
だが今、経営トップの首が危ない大企業はセブン&アイだけではない。
これまで“物言わぬ株主”とやゆされた機関投資家が、大企業にも厳しい視線を注ぐようになっているからだ。セブン&アイのようにアクティビストから解任要求を突き付けられなくとも、大企業の経営者が株主総会で退任を迫られる事態が起きてもおかしくない。
6月の株主総会シーズンの本格到来を前に、既にその兆しが表れている。次ページで明らかにする。