こうした事態を受けて韓国政府は、福島周辺8県の水産物の輸入解禁を改めて否定した。それは国内の消費者が「福島産も混ざっている」として買い控えしないようにとの配慮もあるだろう。また、海洋の放射能調査地点を増やすとともに、調査の周期も短縮した。このようにして、客観的な事実を国民に周知し、国内の水産業者を支援する努力を強化している。

 その一方で、韓悳洙(ハン・ドクス)首相は「汚染水と水産物に関する意図的な虚偽事実の流布に対しては積極的に対応する」と述べ、民主党のデマ流布によって国民生活に悪影響を与えないよう、対応する姿勢も鮮明にした。

 このように処理水の問題は韓国政局の焦点となっており、その攻防は激化している。

処理水放出に対する
民主党の反対運動が過激化

 民主党が主催する「福島原発汚染水海洋投棄反対場外集会」は、李在明代表を中心に、5月20日のソウル、6月3日の釜山(プサン)に次いで、3回目が17日、仁川で行われた。また、李在明代表は、処理水放出反対運動を全国に展開しようと、地方組織を動員している。

 5月20日、ソウル市内の国会前で開かれた集会には、「福島汚染水投棄は放射能テロだ」という横断幕があった。「福島放射能水産物輸入 5000万人が反対する」といプラカードもあった。

 5月26日、福島を訪問した韓国政府視察団の帰国に合わせ、福島産水産物の輸入再開を押し切られる可能性を指摘しながら、集会や署名活動を通じて放流反対の世論を盛り上げることにした。

 6月3日の釜山での集会は水産物の放射能汚染を指摘した。17日に仁川で行われた集会で李在明代表は、「『汚染水』ではなく『核廃水』と呼ぶ」と述べた。

 与党「国民の力」の蔚山(ウルサン)支部が13日、福島第一原発処理水を「核汚染水」と表現した民主党蔚山支部の関係者を告発する声明を出したことに触れ、「核物質を含んでいる地下水は明白に核廃棄物で、(これを)核廃水と言ったので、私が告発される番だ」と主張した。

 李在明代表は「核廃水」の発言に先立ち、処理水を「井戸に毒物を入れた」ことに例え、与党から「第2の狂牛病宣伝扇動」という批判を浴びた。