棚卸資産の場合、そのタイミングは販売という行為によって物理的に手放したときですが、固定資産は手放すことを目的としていません。自ら使うことを目的として所有する資産です。
ということは、その資産の価値は使用することによって減少する、言い換えれば時間の経過によって減少します。ですから、時間の経過に応じて費用を分割して認識し、その分だけ貸借対照表の資産価額を減額させるのです。
減価償却という処理は、資産の費用化という点で棚卸資産とも理論的に整合しているのです。
土地が減価償却対象外なワケ
減価償却は固定資産に対して行われると言いましたが、減価償却対象外の固定資産がいくつかあります。
その代表例が土地です。
土地が減価償却の対象外であることは制度的に決まっていることですし、比較的よく知られてもいるので、「そういうものだ」と言ってしまえばそれまでですが、これにもちゃんと理論的な理由があります。
土地は何年使っても、更地に戻せば基本的に元に戻ります。したがって、時間の経過や使用に伴う価値の劣化がないのです。ですから、資産価額を下落させる理論的根拠がないのです。
いつまでも使えるので、耐用年数が無限という言い方もできます。耐用年数が無限だから、減価償却費はゼロになる、すなわち計上できないのです。
あまり馴染みがないかもしれませんが、建設仮勘定も減価償却の対象外です。建設仮勘定とは、自社で建設中・製造中の有形固定資産です。
たとえば、新しく建設中の工場などが該当します。建設仮勘定は、完成したら適当な科目に振り替えます。建設中の工場であれば完成後は建物という科目に振り替えます。
建設仮勘定が減価償却対象外であることも制度で決まっていることですが、これもちゃんと理論的に説明できます。
建設仮勘定は完成前ですから、まだ稼働していません。稼働していなければ収益に貢献しようがありません。したがって、費用収益対応原則の観点から、費用の計上ができないのです。
原理原則を理解し、ビジネスに活かす
これがわかると、減価償却の開始時点も理論的に判断がつくはずです。
金子智朗著『教養としての「会計」入門』(日本実業出版社 )
固定資産を期中に取得した場合、減価償却は月割りで行います。このような場合に、減価償却の開始月が問題になります。
たとえば、5月に購入し、代金の支払もすべて終わっている設備があるとします。この設備は搬入と設置に少々時間がかかったため、稼働を開始できたのは7月だったとします。このとき、減価償却の開始月は何月でしょうか。
もうおわかりですね。減価償却の開始月は7月です。これも理論的根拠は費用収益対応原則です。収益に貢献するのは稼働してからなので、減価償却開始月は稼働を開始した7月なのです。
なお、一般のビジネスパーソンは、こういう制度をいちいち覚える必要はありません。少ない原理原則を理解し、その理解に基づいて「おそらく、こうだろう」と当たりをつけられることが重要です。会計に興味をもたれた方は、ぜひ拙著をお読みになってみてください。







