建設仮勘定が減価償却対象外であることも制度で決まっていることですが、これもちゃんと理論的に説明できます。

 建設仮勘定は完成前ですから、まだ稼働していません。稼働していなければ収益に貢献しようがありません。したがって、費用収益対応原則の観点から、費用の計上ができないのです。

原理原則を理解し、ビジネスに活かす

 これがわかると、減価償却の開始時点も理論的に判断がつくはずです。

書影:教養としての「会計」入門金子智朗著『教養としての「会計」入門』(日本実業出版社 )

 固定資産を期中に取得した場合、減価償却は月割りで行います。このような場合に、減価償却の開始月が問題になります。

 たとえば、5月に購入し、代金の支払もすべて終わっている設備があるとします。この設備は搬入と設置に少々時間がかかったため、稼働を開始できたのは7月だったとします。このとき、減価償却の開始月は何月でしょうか。

 もうおわかりですね。減価償却の開始月は7月です。これも理論的根拠は費用収益対応原則です。収益に貢献するのは稼働してからなので、減価償却開始月は稼働を開始した7月なのです。

 なお、一般のビジネスパーソンは、こういう制度をいちいち覚える必要はありません。少ない原理原則を理解し、その理解に基づいて「おそらく、こうだろう」と当たりをつけられることが重要です。会計に興味をもたれた方は、ぜひ拙著をお読みになってみてください。