日本人の「天気の話」を世界一流の雑談へ進化させるには? Google元人事に学ぶ【書評】写真はイメージです Photo:PIXTA

視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のチーフ・エディターである吉川清史が豊富な読書量と取材経験などからレビューします。今回取り上げるのは、ビジネスで役立つツールとしての「雑談術」を指南する一冊です。

ビジネス現場での「雑談」は
「とりとめのない話」ではない

「雑談」を苦手とする人は多い。友人同士ならまだしも、職場の同僚のことをまだよく知らなかったり、営業先で初対面の相手と接する場面だったりすると、普段おしゃべりな人でも「何を話していいかわからない」と困惑するケースが多いのではないか。

 そのためか、雑談術を指南するビジネス書が最近目立つ。今回紹介する『世界の一流は「雑談」で何を話しているのか』もその一つだ。

 そもそも皆さんは、雑談をどのようなものと捉えているだろうか? 「じめじめした日が続きますね」「昨日は暑かったのに、今日は上着を着ないと寒いですね」「気がつけばもう今年も半分終わりますね」といった天気や気温、暦の話は、日本人の雑談の「定番」と言っていい。

 こうした話題は「何かしゃべるべきなんだろうけれども、話題が見つからないな」と困った時に、とっかかりとして便利なツールと言える。

 だが、とっかかりにならないケースも覚悟しなければならない。相手が「そうですね」と一言、しかも無表情で答えた途端、あなたは海よりも深い後悔の念にさらされる。「別の話題にすればよかった…」と。もちろんこの場合、会話は続かず、前よりも気まずい沈黙の時間が流れる。

 本書の著者、ピョートル・フェリクス・グジバチ氏はポーランド出身で、20年以上にわたって日本で働いてきた。モルガン・スタンレーを経て、Google Japanの人材開発担当を務めたことでも知られる。また、『ニューエリート グーグル流・新しい価値を生み出し世界を変える人たち』(大和書房)といったベストセラーを含む多くの著書がある。

 そんなグジバチ氏は、多くの日本人ビジネスパーソンが天気の話から会話を始めるのを奇妙に感じてきたという。

 日本人の雑談は天気の話で始まり、その後もグジバチ氏いわく「とりとめのない会話」に終始しがちだ。同氏が聞かれる定番が「日本の料理では何が好きですか?」。人によっては「日本女性は好きですか?」などと無神経なことを聞いてくる。グジバチ氏は「答えたら、ごちそうしてくれるのか」「すてきな女性を紹介してくれるのか」と思うそうだ。

 このように、日本人の多くは雑談を、場を和ませて徐々に関係を深めるための「潤滑油」だと捉えている。だが、グジバチ氏はこう考える。「それだけでは、あまりにもったいない」と。

 本書で指南されるのは、そうした日本的な雑談ではない。仕事のパフォーマンスを上げ、成果を出すことを意識したビジネスツールとしての雑談だ。「とりとめのない、どうでもいい話」ではなく、明確な意図を持った、いわば「戦略的雑談」とでも言うべき「dialogue(ダイアログ:対話)」としての雑談だ。