1万件を超える「幼児から高校生までの保護者の悩み相談」を受け、4000人以上の小中高校生に勉強を教えてきた教育者・石田勝紀が、子どもを勉強嫌いにしないための『勉強しない子に勉強しなさいと言っても、 ぜんぜん勉強しないんですけどの処方箋』を刊行。子どもに失敗してほしくない、教育熱心な人ほど苦悩を抱える大問題への、意外な解決法を提案します。

aaaaaaaaaaaaaaaaPhoto: Adobe Stock

相談件数ナンバーワン!「うちの子勉強しないんですけど!!」への回答

 私はこれまで、幼児から高校生までのお子さんを持つ保護者から1万件を超える悩み相談を受け、4000人以上の小中高校生に勉強を教えてきました。その経験から、確信していることがあります。それは、子どもに失敗してほしくない教育熱心な人ほど余計なことをして、親子関係が険悪になり、苦悩を抱えているということです。

 逆に「子どもは子ども」と割りきってその子の自主性を尊重し、少しずつ手を放していく親に育てられた子は、持って生まれた才能や個性を伸ばして成長しています。

「動物園型」の子育てと「牧場型」の子育て

 ある講演会で、その話を「動物園型」の子育てと「牧場型」の子育てにたとえて説明したところ、最初はニコニコ聞いていた参加者の顔色がサーッと変わりました。

 そして講演会が終わったあと、次のような感想がたくさん寄せられたのです。

「今まで完全な動物園型子育てをしていたと気づきました。これから放牧します!」
「子どもが自分から勉強しないのは私のせいだとわかりました。もう余計な口出しはしません!」

 詳しくは本連載で解説していきますが、私が考える「動物園型」と「牧場型」の子育ての違いは、子どもの自由な行動範囲が狭いか、広いか。これに尽きます。

子どもの行動範囲を広げていけるか

 動物園のように、親の管理下で行動範囲が狭くなればなるほど、子どもは野性を失った動物のように、自分で生きる力が弱まっていきます。

 逆に牧場のように、成長とともに行動範囲が広がっていくと、子どもは何をすればいいか自分で考えるようになります。やりたいことを選択、判断、実行する力がつき、失敗も学習できるので、精神的にも成長していきます。それが将来的に、サバンナのようなサバイバル社会を生き抜く力につながっていくわけです。

「親の理想」より「子どもの才能」優先という考え方

 もちろん赤ちゃんのうちは、生きるために管理型の子育てが絶対に必要です。

 でも子どもは徐々に言葉や態度で意思表示をするようになり、自由に動き回って遊びたがりますよね。幼児期頃から、親の目が届く範囲でどれだけ子どもの好きにさせられるかが、「牧場型」へ移行できる子どもとできない子どもの差として表れはじめるのです。

 たとえば、子どもを芝生広場がある大きな公園に連れていったとしましょう。

 子どもが裸足になってあちこち走り回ろうとしたら、「汚いから靴を履いてこっちに戻りなさい!」と指示するのが「動物園型」。逆に、危ないときだけすぐ助けられるように後をついていき、黙って見守るのが牧場型。

 このように日常的な場面1つとっても、「動物園型」と「牧場型」では、子どもへの接し方が異なります。

 親の中にはよかれと思って、子どもが好きでもない、やりたくもない習いごとをいくつもやらせて「親の理想」を実現しようとする人も少なくありません。

 でもそれが原因で、本来伸びるはずだった「子どもの才能」がつぶされてしまうこともある事実は知っておいてください。

*本記事は『勉強しない子に勉強しなさいと言っても、ぜんぜん勉強しないんですけどの処方箋』から、抜粋・構成したものです。