YouTubeのイメージ写真はイメージです Photo:PIXTA

1909年創業の老舗書店・有隣堂が運営するYouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」。社長の一声でノウハウゼロから始めたチャンネルは、エンターテインメント性重視の内容が人気を博し、2023年6月の登録者数は23万人を超える。しかし、開設当初(2020年2月)の登録者数はわずか200人。現在の人気の秘訣は、開設から3カ月後に行った動画の内容の大幅な刷新だった。本稿では、人気に火がつくきっかけをチャンネル創設メンバーである社員・渡邉氏の語りで振り返る。
本稿は、有隣堂YouTubeチーム『老舗書店「有隣堂」が作る企業YouTubeの世界~「チャンネル登録」すら知らなかった社員が登録者数20万人に育てるまで~』(ホーム社)の一部を抜粋・編集したものです。

「売り出したい」ではなく「好き」を動画にする

 有隣堂は本をはじめ、文房具、食品など、多彩な商品を扱っています。そうした商品への「愛」と「知識」を持つスタッフがたくさんいるのだから、スタッフたちにYouTubeに登場してもらって情熱的に語ってもらおうと考えました。

 私たちYouTubeチームで出演してくれそうなスタッフに当たりをつけ、その商品への愛と知識が魅力になる、ということを伝えながら打診していくことになりました。

 こうして打診を始め、「商品愛の強いスタッフ」代表としてリニューアル一発目で出演してくれたのが、「文房具王になり損ねた女」の通り名を持つスタッフ岡崎弘子です。(崎の文字は正しくは「たつさき」。以下同)

 実は事前ミーティングのとき、岡崎と文具課の課長は、YouTubeで紹介する文房具として、テプラ(キングジムのラベルライター)を推していました。当時、文具課として売り出しに力を入れていたのがこのテプラだったからです。

 しかし、プロデューサーのハヤシさんが目を付けたアイテムは全く別のものでした。

「それ、何ですか?」とハヤシさんが問うと、「これ、すごいティッシュなんです!」と、岡崎が目を輝かせて答えたのが、キムワイプという商品。そして、「それ、面白いじゃないですか」と、その場で取り上げることが決まったのです。

 こうして、リニューアル後、一発目の番組の出演者と商品――すなわち岡崎が出て、キムワイプを紹介する、ということが決まりました。

 それが〈【超性能ティッシュ】キレイの概念が変わる!キムワイプの世界〉https://youtu.be/joXAMsm9u7kです。

 キムワイプとはどんな商品で、何がすごくて、なぜ岡崎が愛しているのかは、ぜひ、この動画を見ていただきたいのですが、ご存じない方のためにキムワイプを簡単に説明すると、主に理系の世界で使われる高性能の紙ワイパーです。

 この動画では、基本情報に加え、国際キムワイプ卓球協会の「キムワイプ卓球」など、マニアックな使い方も紹介しました。キムワイプを全く知らないブッコロー(※動画でMCを勤めるマスコットキャラクター)と、キムワイプが大好きな岡崎の掛け合いが楽しい動画になったと思います。