株価・給料・再編 5年後の業界地図#25Photo by Ryosuke Shimizu

日本銀行や日本政策投資銀行(DBJ)など、政府が所管する公的金融機関の年収がどれぐらいかご存じだろうか。特に日銀は金利上昇抑制を重視する裏側で、半ば円安を自ら引き起こしている形だが、一般人との給与格差はどれほどなのか。特集『円安・金利高・インフレで明暗くっきり! 株価・給料・再編 5年後の業界地図』(全24回)の最終回では、その実態を浮き彫りにするとともに、さらなる「大円安時代」を招きかねない日銀財務悪化シナリオの行く末を展望した。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)

日本銀行・黒田総裁の年収は3500万円
知られざる政府系金融機関の厚遇とは?

「日本の家計の値上げ許容度も高まってきている」。6月上旬の講演でこう話し、世間から強烈なバッシングを浴びた日本銀行の黒田東彦総裁。物価高に苦しむ生活者への配慮を欠いたとして、後に火消しに追われる異例の事態を招いたのは記憶に新しい。

 背景には、黒田総裁の“庶民感覚の欠如”があるのではとも報じられたが、実際、日銀総裁の年収は3500万円に上る。もちろん重要な職務であるから、「もらい過ぎ」と断じることはできない。ただし、日本人の平均給与額である433万円(国税庁の2020年分民間給与統計調査)の8倍以上であることも事実。

 しかも足元では、日銀が金利上昇抑制に重きを置く政策を取っている。欧米との金利差拡大を意識した円安、それによる物価高を実質的には日銀が自ら引き起こしているような形だ。

 ウクライナ戦争で原油や穀物などの資源高が起こる中、円安がこの値動きを増幅し、日本でもインフレの波が到来しようとしている。いまだに本格的な賃上げが起こらない中、相次ぐ食料品の値上げなどで生活が苦しくなる一方の庶民からすれば「自ら物価高を引き起こして何を言うか」と怒りが生じるのも無理はない。

 実は卑近な話をすれば、“通貨の番人”と呼ばれる日銀は総裁もさることながら、副総裁や審議委員などのボードメンバー、さらに職員も給与水準はハイレベルだ。このほか、政府が所管する他の金融機関も、全般的に高給であることをご存じだろうか。

 日本政策投資銀行(DBJ)、日本政策金融公庫、国際協力銀行……。次ページでは、こうした政府系金融機関の知られざる給与の実態を開陳。民間の平均年収との格差の実態を明らかにするとともに、この先さらなる円安につながりかねない日銀の財務悪化シナリオを展望する。そこから、「給与と財務不安」を巡る意外な関係性も浮かび上がってきた。