株価・給料・再編 5年後の業界地図#21

三菱商事や伊藤忠商事など、2022年3月期決算で最高益が相次いだ総合商社。資源高を追い風に足元は絶好調だが、実は資源分野の比重によって今後、業界の首位攻防戦にも大きな影響が出そうな雲行きだ。そこで特集『円安・金利高・インフレで明暗くっきり! 株価・給料・再編 5年後の業界地図』(全24回)の#21では、今後5年の予想純利益データに基づき、新たな勝者を予測した。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)

足元は資源高で空前の好業績!
「5年後の勝者」は意外な結果に

 三菱商事9375億円、三井物産9147億円、伊藤忠商事8202億円――。総合商社が空前の好業績に沸いている。

 2022年3月期決算で、各社の純利益は冒頭のように驚異的な水準を記録。住友商事(4636億円)、丸紅(4243億円)を含む大手5社とも最高益となり、純利益合計額は22年3月期だけで3兆5000億円超に上る。

 ウクライナ戦争に伴う原油やガス、石炭や鉄鉱石といった資源の価格高騰が、この業界にとっては極めて大きな追い風となった形だ。

 振り返れば、「投資の神様」として名高いウォーレン・バフェット氏率いる米投資会社バークシャー・ハサウェイが20年8月末、総合商社5社の株式を取得したと発表。当時は懐疑的な声も少なくなかったが、あれから各社の株価は1.5~2倍程度に上がっており、結果的にその目に狂いがなかったことを証明してみせた。

 投資家だけではない。働くビジネスパーソンの目線でも、総合商社は常に垂ぜんの的。何しろ、各社の22年3月期の平均年収は1500万円前後にも上り、言わずと知れた「超高年収」業界だからだ。

 バフェット氏も投資し、就職では大人気。しかし、今の絶好調はいつまでも続くわけではない。そして、序列も変化していくだろう。

 過去数年も業界「王者」の序列が目まぐるしく変わった。20年6月には伊藤忠が時価総額で初の総合商社トップになり、一時は純利益、株価、時価総額とも首位の「三冠王」を達成。だが、直近では三菱商事がいずれも再逆転した。

 今から5年間はどんなシナリオが待ち受けるのか。

 足元では資源高に支えられている商社だが、皮肉にも中期では“脱資源”“脱炭素”が重要だといわれてきた。「非資源」分野の強化こそが課題とみられていたのだ。実際、資源高が一服すれば、収益環境が一変しそうで、今期は5社とも減益を見込む。

 では、脱資源、脱炭素を進めた企業こそが5年後の勝者となるのかといえば、そう単純な話ではなさそうだ。

 実は今回、商社業界のトップアナリストが5期先までの予想純利益データを算出したところ、結果は意外なものとなった。

 次ページでは、投資先としての商社株の位置付け、資源価格の見通しや「ポスト資源高」を巡る戦略、各社の収益・年収の動向から首位攻防戦の行方に至るまで、一挙に明らかにしていこう。

図表:総合商社業界天気予報サンプル