初心者が一からマーケティングを学ぼうとすると、多くの専門用語に圧倒され、知識を詰め込むことに意識が向きがち……。しかし、自社の売り上げアップを目指すのであれば、より多くの成功事例を知ることが近道であり、一番簡単な方法だ。マーケティングの専門家・おじま優來著『うまくいっている会社の非常識な儲け方』(すばる舎)より、企業の実例を交えて、顧客獲得のヒントを探ってみよう。
マーケティングにおける
2つの有名な逸話
マーケティングを学ぶと、必ず出てくるくらいに有名な2つの逸話があります。
「火事と喧嘩は江戸の華」と言われていた江戸時代。
当時の呉服屋は火事になったとき、何よりも先に顧客台帳を地中などの安全な場所に避難させて、それから逃げたのだそうです。
顧客台帳、つまりリストです。
たとえ商品の反物は燃えてなくなっても、顧客台帳だけあれば、それで商売がやり直せたからです。
また、鉄鋼王と呼ばれたアンドリュー・カーネギーも「私の財産をすべて持っていっても構わない。ただし、顧客リストだけは持っていかないでくれ。そうすれば、私は今の財産をまたすぐに築いてみせる」という趣旨の言葉を残したとされます。
この2つの逸話から、一度獲得したリストは、そこに記載されたお客様に何度も何度も働きかけ、商品を販売することを可能にするため、企業が安定した売上をつくる基盤となることがわかります。
ビジネスをする以上、最大の資産は顧客、お客様です。
そのため、顧客数を増やしていくことが大切なのです。
お客様が増える=リストが増える、です。
では、マーケティングが上手な企業は、どうやってリストを獲得しているのか?
その具体的な方法について、事例を紹介します。
高枝切りバサミを
テレビ通販で売り続ける理由
高枝切りバサミという商品をご存知でしょうか?
手が届かない高さにある庭木などの枝を、脚立に登らなくても安全に切れる、という商品です。
この高枝切りバサミは、長年テレビ通販で販売されていました。私が知る限りでも10年以上は販売され続けたベストセラー商品です。
一定年齢以上の方なら、知らない方はいないくらいだと思います(ちなみに今でも、ネット通販やホームセンターなどで販売されています)。
もし私がマーケティングに関わっていなければ、「よく売れた商品なんだな~」「便利な商品なんだろうなぁ」といった感想しか抱かなかったでしょう。
しかし、とある方から初めて高枝切りバサミに関するマーケティングの戦略を聞いたときに、何かで頭を殴られたような衝撃が襲ってきました。
実はこの高枝切りバサミ、販売してもそれほど利益はないというのです。
もしかしたら、テレビ通販では赤字で売っていた可能性すらあると……。
みなさんなら、どう思いますか?
1万円のものを販売して、例えば10円の利益しか出ないとしたら、あるいは逆に赤字になるとしたら、その商品を販売し続けますか?