P.F.ドラッカー経営論集
ダイヤモンド社刊
2520円(税込)

 「政治、社会、経済、企業のいずれにせよ、およそ人間に関わることについては、未来を予想してもあまり意味がない。だが、すでに起こり、後戻りのないことであって、10年後、20年後に影響をもたらすことについて知ることには重大な意味がある。しかもそのようなすでに起こった未来を明らかにし備えることは可能である」(『P.F.ドラッカー経営論集』)

 大戦争の再発、疫病の大流行、大隕石との衝突などの大事変がない限り、これからの世界を左右する支配的な要因は、経済でもなければ技術でもない。それは人口構造の変化である。

 先進国社会は今、集団自殺をしつつあるとドラッカーは言う。人口を維持しうるだけの赤ん坊を生んでいない。理由は簡単である。若い人たちが、増大する高齢者人口を扶養し切れなくなったからである。重荷に耐えるには、被扶養者人口で高齢者の対極にある子どもの数を減らすしかない。

 先進国のなかで、人口を維持できる出生率にかろうじてとどまっているのは、米国だけである。その米国でも、米国生まれの国民の出生率は、人口を維持する水準をはるかに下回っている。

 先進国の人口減はすでに起こった事実であり、それぞれの国と社会と経済に対し、当然の結果をもたらす。すでに労働力人口の大幅減が目前に迫った。

「あらゆる先進国において、定年、すなわち働くことを強制的にやめさせる年齢が、健康人については75歳まで延長される」(『P.F.ドラッカー経営論集』)