日本政府としては、IAEAの報告に基づく処理水の海洋放出を決定しており、民主党の意見を聞いて対応する考えは全くない。
半面、尹錫悦政権は処理水の海洋放出について、原子力分野の最高権威であるIAEAの最終報告を尊重するというものであり、日本政府に対し、改めて処理水の海洋放出を許諾する必要があるとは考えていないだろう。日韓首脳はIAEAの科学的分析を受け入れ、それを前提にどのように協力すべきかを協議したのである。
日韓首脳会談のやり取りのポイントは、処理水放出の過程で問題が生じれば、それは直ちに韓国側に知らされ、日韓で協力してこれに対処していこうということである。
韓国の政府与党は
現実的な対応に注力
日韓首脳会談を踏まえ、与党「国民の力」は「わが政府が現実的に勝ち取ることができる成果を成し遂げた」「そろそろ政界が呼応する返事をする(首脳会談の内容で受け入れる)番だ。国論分裂を引き起こす消耗的論争の代わりに、今後行われる日本側の(処理水)放出および管理段階での措置に万全を期すべきときだ」と強調した。
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日韓の外交において、革新系の政党は得てして国民感情を高揚させ、それを根拠に日本に不当な要求を突き付けてきた。今回の処理水放出問題への民主党の対応は、まさにその典型である。
これに対し国民の力は、日韓がいかに協力すべきかという現実的な対応に力点を置いている。
韓国の政府与党が国民感情を鎮められるよう、日本としても協力していくことにメリットはある。だが、民主党は既に国際的に孤立した政党であり、その主張を考慮する必要は全くないだろう。
(元駐韓国特命全権大使 武藤正敏)