トランプ禍で4~6月期「マイナス成長」濃厚の日本経済、それでも26年春闘“高賃上げ継続”が期待できる理由Photo:PIXTA

トランプ関税の逆風、懸念されるのは
企業収益の下振れと賃上げへの波及

 日本経済は2025年1~3月期の実質GDP成長率(2次速報)は、トランプ関税によるマイナス影響が顕在化する前のタイミングであるにもかかわらず、前期比▲0.0%(年率▲0.2%)と4期ぶりのマイナス成長になった。

 前期の反動などによる外需の大幅なマイナス寄与(▲0.8%Pt)が主因だが、在庫投資の押し上げを除いた最終需要は前期比▲0.7%と芳しくない。輸入の減少を主因として「出来過ぎ」の感があった前期の高成長とならしてみれば日本経済は回復基調を維持していると評価しているが、経済活動の基調は力強さを欠くと言わざるを得ない。4~6月期は、輸出や設備投資が下振れる公算が大きく、当面は食料インフレの継続で個人消費にも景気の牽引(けんいん)役を期待できない中で、テクニカルリセッション(2四半期連続のマイナス成長)に陥る可能性も否定できない状況だ。

「踊り場」局面を迎える日本経済の先行きは、各国と米国との関税見直し交渉の行方に大きく左右される。

 トランプ関税に対する懸念は米国内でも強まっており、米国が中国と大幅関税引き下げを合意したのも金融市場の「トリプル安」(株安・債券安・ドル安)の動きを意識せざるを得なくなったことが要因と考えられる。

 ただし、関税政策の見直しがどの程度まで行われるかははっきしりない。足元でもトランプ大統領が欧州連合(EU)に対して50%の追加関税を示唆したほか(発動は7月9日に延期)、鉄鋼・アルミニウムにも50%関税を賦課する大統領令に署名するなど予断を許さない状況だ。中国が継続するレアアースなど重要鉱物の輸出規制を巡って緊張が走った米中交渉については、米中首脳電話会談を経て関係改善が模索されているもようだが、日米の関税交渉については自動車関税などで両国の主張に隔たりがあり、先行きは不透明だ。

 ただ一方で、世界経済の減速見通しもあってこれまで原油安が進み輸入コストが抑えられていることから企業収益はなお高水準で、サービス業を中心に人手不足感は強い。

 今春闘の賃上げ率は直近の連合回答集計(第6回)では全体で5.26%(従業員300人未満の中小企業では4.70%)となっているが、企業収益の大幅下振れがなければ人手不足の深刻化のもと企業の人材確保の意欲は強く、来年春闘も4%台半ば以上の高賃上げが続くと筆者は予想している。

 今後の関税見直し交渉を経て日本に対する関税率の引き上げ幅が縮小されれば、日本経済は深刻な腰折れを回避できる公算が大きくなる。日本銀行は6月16、17日の金融政策決定会合で政策金利据え置きを決めたが、高賃上げ持続の流れを確認した後、26年1~3月には利上げを再開すると予想する。