「一次相続時の約束」を反映した遺言書をつくる

「話が違う」。兄は憤慨しますが、残念ながら法律では、兄を救う手はありません。弟の言い分が通ることになります。

「一次相続ではこうだった。だから二次相続ではこうあるべきだ」と考える人はとても多くいます。気持ちはよくわかりますし、「一次」「二次」という呼び方がまた誤解を招きやすいのですが、法律では、「一次相続」と「二次相続」はまったく関係のない、それぞれ独立した相続であるととらえられます。

「一次相続は一次相続ですでに完結し、二次相続とは一切関係がない」。

 これが法律の考え方なのです。

 さて、二次相続時の約束を前提として一次相続の分け方を決めた場合、二次相続時の「掌返し」を防ぐにはどうすればよいのでしょうか。

 今回のケースでいえば、「一次相続時の約束を盛り込んだ遺言書」を母が作成しておけば、それで済む話でした。「自宅は兄に相続させる」と、たった10文字の遺言書を作成するだけで、「自宅は兄が相続する」という約束は守られたはずだったのです。

 たとえ兄弟の間とはいえ、口約束だけを担保に一次相続を行うのは危険です。「二次相続時にはこうしよう」と約束したのであれば、その約束を反映した遺言書をつくることをおすすめします。

(本原稿は橘慶太著『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】』から一部抜粋・追加加筆したものです)