退職金のイメージ写真Photo:PIXTA

退職金に対する課税の見直し議論が政府の中で進み始め、SNSなどでは「退職金増税だ!」という怒りや恨みの声が渦巻いている。退職金にかかる税金はかなり優遇されている。それが増税されそうな気配なのだ。反対の声を上げるなら今しかない。税制の恩恵を押さえた上で、的確な意見をみんなで出していこう。(ファイナンシャルプランナー〈CFP〉、生活設計塾クルー取締役 深田晶恵)

「退職金増税」となれば
多くの国民に影響あり!

 来年度の税制改正に向けた議論が始まっている。6月末に提出された政府税制調査会(首相の諮問機関、税制の審議会)の中期答申の中で「退職金課税の見直しの必要性」が盛り込まれた。SNS上では「退職金増税だ!サラリーマン狙いうちの増税だ!」と話題になっている。

 退職金課税の見直し案は今回初めて出てきたわけでなく、2017年の税制調査会において、すでに「今後の課題」とされており、その後もたびたび審議の対象になっている。さらに今回は、税制調査会のみならず、政府の「骨太の方針」にも「退職金課税の見直し」が盛り込まれている。

 具体的な見直し方法はまだ出てきていないため、「見直し=増税」となるかどうかは現時点では不明だ。ただ、防衛費増額の財源を賄うための増税をもくろんでいる岸田政権である。税負担が軽減される方向で話が進むことはまずないだろう。いよいよ増税が実行されそうな気配となってきた。

 実はこの見直し案は、サラリーマンだけに関係するものではない。iDeCo(個人型確定拠出年金)で積み立てたお金や、自営業者の退職金づくりのための制度である「小規模企業共済」の共済金を60歳、65歳以降に一時金で受け取ると、退職所得扱いになる。つまり、退職金増税となった場合のターゲットになるということだ。

 退職金増税は、手取り収入額の減少を意味するので、多くの人の老後の生活設計に大きな影響を与えることになる。

 筆者は、給与、退職金、年金の手取り計算をライフワークとしている自称「手取リスト」だ。当コラムでも以前からお伝えしてきたが、退職金の税金は、国民にとってナンバーワンといえるほど優遇されているのだ。

 そこで今回は、退職金の税金がいかに優遇されているかをお伝えしつつ、もしも退職金増税をされてしまった場合にどのような影響が出るのかを解説したい。

 読者のみなさんが退職金増税に納得できない、反対したいと考えるなら、これを機会に退職金の課税方法をちゃんと知っておこう。