給与収入だけで老後資金をまかなえるのか不安に思う人が増えている。多くの人にとって「投資」が避けて通れない時代になってきた。資産を増やすという点で大きな選択肢の1つになるのが株式投資だ。「株投資をはじめたいけど、どうしたらいいのか?」。そんな方に参考になる書籍『株の投資大全ーー成長株をどう見極め、いつ買ったらいいのか』(小泉秀希著、ひふみ株式戦略部監修)が発刊された。「ひふみ投信」の創始者、藤野英人氏率いる投資のプロ集団「ひふみ株式戦略部」が全面監修した初の本。株で資産をつくるためには、何をどうすればいいのか? 本連載の特別編として、今回から著者の小泉氏による【新NISAを100%活かす投資術】の記事をお届けする(金曜日、全10回予定)。今後の資産形成の参考にしていただきたい。

【新NISAを100%活かす投資術 第1回】新NISAでは超成長株を買おう!Photo: Adobe Stock

「新NISA」の投資枠は、
1800万円までに拡大

 2024年1月から新NISAの投資枠が2倍以上に大幅拡充される。これは歴史に残るような画期的な制度改正であり、日本人の資産形成にとって大きな追い風になるだろう。新NISAへの理解が広まるにつれて、新NISAは大きなブームになっていくことが予想できる。

 まだ投資をやっていないという人も、ぜひこの新NISAのスタートを契機に、将来に向けた資産形成を始めてみてはいかがだろうか。

 まず、新NISAを使って「世界株のインデックス投信でつみたて投資をする」方法は、将来的に着実に大きな資産形成に役立つだろう。

 さらに、何倍あるいは何十倍に成長するような「超成長株」をNISAで長期投資できれば、さらに大きな資産を作ることも可能となる。本連載では、それらの投資の方法について述べていく。

 まずは、新NISAの概要についてざっくりおさらいしておこう。

 NISAは、株や投資信託の収益が非課税になる制度だ。

 従来は、通常の投資(普通に株や投資信託を買う投資)なら合計600万円まで、毎月定額を買い付ける「つみたて投資」なら合計800万円までの枠が与えられて、どちらか一方を利用できる仕組みとなっている。

 それに対して2024年から始まる新NISAでは、成長投資枠(通常の投資で使える投資枠)とつみたて投資枠が合計で1800万円まで利用できるようになる。

 成長投資枠は合計で1200万円まで、つみたて投資枠は1800万円までだが、合計で1800万円までとなっている。つみたて投資だけする場合には1800万円の枠を全て使えるが、成長投資枠で1200万円利用する場合、つみたて投資枠として利用できるのは残りの600万円までとなる。

 毎年投資できる金額は、成長投資枠が240万円まで、つみたて投資枠は120万円までだ。そして、総枠の上限(成長投資枠1200万円、成長投資枠+積立投資枠で1800万円)に達するまで投資ができる。
 また、新NISAの投資枠で買っていた株や投資信託を売却した場合、その金額分は別の投資に再利用できる。

【新NISAを100%活かす投資術 第1回】新NISAでは超成長株を買おう!新NISAの概要 出典:『株の投資大全』より
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「全世界株インデックス投信」を毎月5万円、
30年積み立てると、合計8800万円に!

 新NISAを使った運用で最もオーソドックスな戦略は、世界全体の株式にバランスよく分散投資した投資信託を毎月定額買い付ける「つみたて投資」だ。銘柄も時間も分散して、「間違った銘柄」「間違ったタイミング」で投資してしまうリスクを少なくして、株のごく平均的な収益率を狙う戦略だ。

 そうしたつみたて投資の対象として代表的な銘柄の一つが、三菱UFJ国際投信が運用する「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」だ。

 この投信はMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスという全世界株式インデックスに連動するように運用されているが、このMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスの過去30年の平均パフォーマンスは配当込みで年率8.8%。各種の研究・調査で株式の収益率は世界的・歴史的に平均年率7~10%程度とされているが、それを体現するようなパフォーマンスとなっている。

 年率8.8%のパフォーマンスの投信を毎年5万円ずつ積み立てると、合計評価額は10年で957万円、20年で3256万円、30年で8781万円という計算になる。

「30年で8781万円」のうち、投資元本1800万円であり、投資によってもたらされた収益は約7000万円がということになる。

 本来であれば、収益の7000万円対して約20%の1400万円程が税金として取られることになる。

 しかし、新NISAを利用している場合、この税金がゼロとなる。新NISAのメリットの大きさが感じられるだろう。

(※本稿は、書き下ろし記事です)

小泉秀希(こいずみ・ひでき)
株式・金融ライター
東京大学卒業後、日興證券(現在のSMBC日興証券)などを経て、1999年より株式・金融ライターに。マネー雑誌『ダイヤモンドZAi』には創刊時から携わり、特集記事や「名投資家に学ぶ株の鉄則!」などの連載を長年担当。『たった7日で株とチャートの達人になる!』『めちゃくちゃ売れてる株の雑誌ザイが作った「株」入門』ほか、株式投資関連の書籍の執筆・編集を多数手がけ、その累計部数は100万部以上に。また、自らも個人投資家として熱心に投資に取り組んでいる。市民講座や社会人向けの株式投資講座などでの講演も多数。
ひふみ株式戦略部
投資信託ひふみシリーズのファンド運用を担うレオス・キャピタルワークスのメンバーにより構成された本書監修プロジェクトチーム。
ひふみ投信:https://hifumi.rheos.jp/