エヌビディア AI王者と台湾の黒子#2Photo:SOPA Images/gettyimages

米エヌビディアのジェンスン・フアンCEOはAIの新たな熱狂を引き起こした。しかし、エヌビディアの2016年の最初のAIスーパーコンピューターから最新の超大規模AIサーバーに至るまで、全て台湾クアンタ・コンピュータの手によるものであることはあまり知られていない。ノートパソコン、クラウドコンピューティング、AIサーバーの分野で業界トップのクアンタは、世界のテクノロジー業界を支える最も重要な“キングメーカー”だ。特集『エヌビディア AI王者と台湾の黒子』(全7回)の#2では、エヌビディアを支えるクアンタとの蜜月関係を解き明かす。(台湾「財訊」 楊喻斐、翻訳・再編集/ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)

COMPUTEXに3年ぶり登場のフアン氏
行動から見えたクアンタへの執着

 生成AIの熱狂が世界中を席巻し、高速コンピューティングアプリケーションの急増は、AI半導体を手掛ける米エヌビディアを歴史的な高みへと押し上げている。創業者兼CEO(最高経営責任者)のジェンスン・フアン氏は新たな時代の寵児となり、一挙手一投足がメディアの注目を集める。

 5~6月に台湾・台北市で開催された国際展示会「COMPUTEX」には3年ぶりにフアン氏が登壇し、どこへ行っても旋風を巻き起こした。多くのメディアが追い掛け回したフアン氏の数日間にわたる行動を分析して見えてきたのは、台湾クアンタ・コンピュータ(広達電脳)への執着だ。

 展示会初日の講演で、フアン氏はクアンタ子会社のクアンタクラウドテクノロジー(QCT、雲達科技)について何度か言及した。彼はメディアをQCTの会見場に連れていき、エヌビディアとQCTが共同開発した“秘密兵器”である超大規模HPC-AIサーバーを熱心に紹介した。

QCTの記者会見時のエヌビディア創業者のフアン氏、クアンタ副董事長の梁次震氏、QCT総経理の楊麒令氏エヌビディア創業者のフアン氏(中央)はQCTの記者会見に登場し、クアンタ副董事長の梁次震氏(左)と、QCT総経理の楊麒令氏(右)と会見を盛り上げた 写真:彭世杰

 9月に発売予定のエンタープライズ市場向けのこのサーバーは、エヌビディアが自社開発した「Grace Hopper Superchip」を搭載し、QCTはこの製品の台湾初のサプライヤーとなる。

 また、QCTの記者会見では、2016年8月に撮影された写真が思わぬ注目を集めた。