生徒を待ち受けていた罠

 しかし、養成所を卒業し、舞台に立ち始めたところで、その生徒の成長が急に止まってしまったのです。困ったその生徒は、またまわりにアドバイスを求めましたが、いいアドバイスは出てきません。なぜなら、これまでは戦うフィールドが「学校」であったため、多少なりとも正解があったわけですが、舞台に出ればそこはプロの世界です。まわりが助けてあげようとしても、正解がないため適切なことを言えないのです。

 つまり、その生徒は人の意見を聞いて、その通りにやることに慣れてしまって、気がついたときには自分で考えることを忘れていたのです。

 これはビジネスにもお笑いにも言えることかと思いますが、世の中の大半のことには正解などありません。ですが、少しでもリスクを減らそうとして、つい人に意見を聞いてしまうことはあるかと思います。

 そんなときに「正解でなくても、自分はこれでいく」と決められる人が最終的には大きな成功を掴むことができます。もちろん、なかには失敗してしまうこともあるかと思いますが、その結果には納得できるでしょう。

 つまり、大事なのは人の意見を聞いてなるべくリスクを抑えることではなく、不正解でいいから自分で考えて、意思決定をすることなのです。

 人に意見を聞くのもいいですが、最初から意見を聞くのではなく、先に自分で意見を固めてからまわりの意見に耳を傾けるなど、やり方を工夫してみましょう。

 これは誰にでも言えることですが、皆さんの人生は皆さんのものです。仮にまわりから反対されることがあっても、自分が納得したのであればそれはもはや成功と言えるでしょう。

 逆に、人の顔色をうかがい、人の意見ばかり聞いているのは「自分の人生を楽しんでいる」とは言えないかもしれません。

 私が長年、NSCで言い続けていることは「好きなことしいや」です。人に言われてつまらないと思うなら、人に反対されても好きなことをするべきです。もちろん、仕事をしているとすべてがうまくいくわけではありませんが、頭の片隅に入れておいていただけると嬉しいです。