「レーズンのヘタは取り除け」「灰色の釘は認めない」買い負けニッポンのひどすぎ勘違いレーズンパン用のレーズン。レーズンの収穫量が100とすると、日本の要求品質だと70に減ってしまう理由とは?(写真はイメージです) Photo:PIXTA

日本企業の調達における不安定さや買い負けの深層は何か。長年、サプライチェーンのコンサルティングに従事する筆者が、三つの「本当にあった話」から鋭く分析する。(未来調達研究所 坂口孝則)

「買い負け」の原因その1
日本人はしゃくし定規

 あまりにもひどい。ひどすぎる。

 2000年代後半、アジアの他国に水産物の競りで負けたことから、「買い負け」という言葉が登場し広まったと思う。そして今では、半導体から水産物以外の食料まで、日本は「買い負け」ている。

 では、買い負けに共通する原因とは何だろうか。まずは、筆者が聞いた印象的なエピソードを紹介したい。この話は、日本という国がどれだけしゃくし定規かを教えてくれる。

 それは東日本大震災が起きた直後、復興が始まったばかりの時だ。某住宅メーカーが仮設住宅やプレハブの建設を請け負った。利益度外視で社会的使命を優先した案件だった。

 50棟ほど建設し、県からの検収を迎えた。ところが、県の担当者が「仕様書では釘の色は灰色ではなく白のはずなので認められない」と言い放ったという。

 住宅メーカー側は耳を疑った。こんな緊急事態に、釘の色ひとつで何を言ってるんだ――? 猛抗議したが、県の担当者の意見は変わることはなかった。官と民の関係だ。住宅メーカーはやむなく手直しに合意した。その間、大勢の被災者が避難先の体育館で寒い日々を過ごし続けた。

 契約だ、と言えばその通りだ。けれど、なぜ柔軟に対応できないのだろうか。

 似たようなことが、民間企業同士の取引でも起きているだろう。時代や環境が急変しているのに、日本企業はしゃくし定規すぎて柔軟な対応ができていない。かつて、日本経済が成長し購買力があった時代はともかく、今は大した量を購入できなくても、相変わらずの態度。そんな国に積極的に販売したがる海外企業はあるだろうか。

 一昔前なら日本の長所でもあった点が、今の時代、逆作用しているのではないか。