「がんです」と告知されたら、まず考えたいのが「どこでどのように治療するか」だ。がん治療に関する情報が溢れているからこそ、誰を信じてどのような治療をすべきか迷う人は少なくない。がん治療の要である病院選びのポイントと、主治医との信頼関係の築き方とは?本稿は、佐藤典宏『がんの壁 60代・70代・80代で乗り越える』(飛鳥新社)の一部を抜粋・編集したものです。
病院は「手術件数」で選ぶと
死亡率が低くなる
がんになったとき、「どの病院を選ぶか」という選択は、治療成績(術後の生存率)だけでなく、その後の生活の質を左右するうえで最も重要なポイントといえます。
2022年、「早期がんの生存率に格差」というニュースが報道されました。
日本経済新聞の病院実力調査で、全国の病院における肺、胃、大腸、乳房、肝臓の5大がんの生存率を調査したところ、患者の平均年齢が同じでも、病院によって10ポイント(10%)以上の開きがあったということです。つまり、病院間でがんの治療成績に格差があることが浮き彫りになったわけです。
がんの診断・治療のための理想の病院選びについて、2つの重要なポイントをあげます。
1. 治療実績がある病院を選ぶ
まずは、できるだけ治療実績がある病院を選ぶことです。一般的に、どんなことでも「数(または量)をこなせば上達する」といわれますが、がんの治療についても同じことがいえます。
医学用語で、手術件数が多い病院を「ハイボリュームセンター」、逆に少ない病院を「ローボリュームセンター」といいますが、ハイボリュームセンターで手術を受けたほうが、術後の合併症(手術にともなう望ましくない病状)や死亡率が少ないことが多くの研究で示されています。
たとえば、東京大学病院外科の研究チームが、全国の800以上の病院で膵頭十二指腸切除術という比較的大きな手術を受けた1万人以上の患者さんについて、病院の年間の手術件数と、手術による死亡率、入院期間、医療費についての関係を調査しました。
その結果、入院中の死亡率は、手術件数が年間8例未満の病院(ローボリュームセンター)では5.0%と高かったのに対し、年間29例以上の病院(ハイボリュームセンター)では1.4%と低くなっていました。
さらに、ハイボリュームセンターでは患者さんの入院期間も短く、入院中にかかったすべての医療費も安かったとのことです。
また、先ほど述べた通り、病院の手術件数は、手術後の長期の生存率にも影響することがわかっています。
実際に、日本の複数の病院における手術件数とがん手術後の生存期間の関係についての研究では、膵臓がんの手術を受けた患者さんの3年後の生存率は、年間の膵臓がんの手術件数が多いハイボリュームセンターで最も高く、手術件数が少ないローボリュームセンターで最も低くなっていました。
極端にいうと、たくさん手術をしている病院で手術を受けたほうが、長生きする可能性が高いということです。
こうした治療実績については、インターネットの病院ランキングや手術症例数が多い病院を掲載した本・雑誌などで調べられます。
いろいろな雑誌に「手術数でわかるいい病院」、「病院の実力」や「病院ランキング」といった特集号がありますので、最新のものを見るのがいいと思います。
たとえば、「カルー」というサイトの「治療実績」というページ(https://caloo.jp/achievements/)では、おもながんについて、病院別の治療件数を調べることができます。